失意の日を経て…宇野昌磨に訪れた変化 「100点ではないから伸びていける」
シニアデビューから2年、宇野昌磨は世界のトップスケーターを狙える位置につけている 【坂本清】
飛躍の転機となった出来事
早くから見る者を引きつける力とともに、その将来を嘱望されていた宇野は、2014−15シーズン、4回転トウループ、トリプルアクセルを会得すると、一気に頭角を現した。ジュニアグランプリ(GP)ファイナルに初めて出場し優勝を遂げ、全日本選手権でも初の表彰台となる2位、世界ジュニア選手権も初優勝と、「初めて」尽くしでシーズンを終え、翌15−16シーズン、シニアへと移行した。
宇野はそこでも期待にたがわぬ活躍を見せる。テロ事件の影響によりショートプログラムのみで結果が決まる変則の方式となったGPシリーズのエリック・ボンパール杯(フランス)で初優勝を飾ると、GPファイナルでも3位と表彰台に上がった。
15−16シーズン最大の目標としていた世界選手権では7位に終わり、悔し涙に暮れた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
「やってきたことを、否定してしまいました」
大会前の1カ月間、休日もなく猛練習を積んだ。ミスをしたことで、その時間を自分で否定した。そう思った。ショックだったし、そのまま引き下がるわけにはいかなかった。帰国すると休息もなく練習を始める。その中で、新しいジャンプを習得する。4回転フリップだった。
1年前とは異なる姿を見せる
失意を味わってから1年後の世界選手権では、銀メダルを獲得。進化を明確に示した 【坂本清】
そして2度目の世界選手権を迎える。
ショートはパーソナルベストの104.86点。世界歴代3位のスコアで2位と好スタートを切り、フリーへ臨んだ。真価が問われる日だった。
そこで見せたのは、1年前の世界選手権とは異なる姿だった。
冒頭から4回転ループ、4回転フリップを成功。3回転ルッツこそ着氷で乱れるが、そこで崩れることなく、その後のジャンプを決めていく。滑り終えると、左手を突き上げ、穏やかな笑みを浮かべた。
得点は214.45点。合計は319.31点。終わってみれば、ショートからすべてパーソナルベストを更新。優勝した羽生にわずか2.28点差での銀メダルは、失意に沈んだ日からの進化を明確に示していた。