無良崇人が貫く信念、抱いてきた葛藤 プログラムに重ねるスケート人生

長谷川仁美
 来年2月の平昌五輪に向けたシーズンが、いよいよ始まる。今季もこれまで以上に過酷で、ハイレベルな争いが展開されるだろう。前回のソチ五輪から3年半。出場権を狙う選手たちはどのような道を歩んできたのか。連載の第6回は無良崇人(洋菓子のヒロタ)の過去3シーズンを振り返る。

スケートカナダ優勝、涙を抑えきれず

前回ソチ五輪の出場を逃した無良は、平昌を目指し新たな4年間に進むことを決断。14−15シーズンはフリーで『オペラ座の怪人』を演じた 【写真:ロイター/アフロ】

 五輪の選考が懸かる全日本選手権に、無良崇人はこれまで2度出場している。

「バンクーバーの頃は五輪には興味がなかったんですけど、前回ソチの時にうまくいけば出られるかもしれないという状態になって、やっと実感が湧いて。だけど、『五輪に出られるかもしれない』という気持ちに自分が負けて、シーズンを棒に振りました」

 シーズン後、「平昌五輪出場を目指す」と新しい4年間に進むことを決めた。

 オフ中には、1998年長野五輪金メダリストのイリヤ・クーリックから指導を受け、4回転の感覚をつかむことと、ベーシックなスケーティングを学んだ。

 それから数カ月後の2014年スケートカナダ。フリーで2つの4回転を入れた無良は、ノーミスの『オペラ座の怪人』で173.24点、総合255.81点と、それまでのパーソナルベストを大幅に更新した。苦しかった時期を経て、やっと納得の演技ができたこと、それが評価されたことに、涙を抑えきれなかった。五輪の翌シーズンを、完璧にスタートさせた。

14−15シーズンのスケートカナダでは自己ベストを大幅に更新。苦しい時期を乗り越え、会心の演技を披露できたことに涙を抑えられなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 続くNHK杯でも3位となり、初めてグランプリファイナルにも出場した。ただ、シーズン序盤の好調が、後半の歯車を狂わせた。

「スケートカナダで、フリーの得点がいきなり上がったので、自信になった部分とプレッシャーになった部分とが出てきました」

 全日本選手権では5位。四大陸選手権と世界選手権でも思うような演技ができないままシーズンを終えることになった。特に世界選手権のショートでは、信じられないミスが重なり、23位スタートに。フリー12位と追い上げたが、最終順位は16位となった。

「(世界選手権のショートでは)前向きに試合に臨めていなかった感じが、若干あったんです。『なにくそ』って突っ込んでいけなかった」と振り返った。だから、「練習を重ねて自信を持って試合に臨みたい」と、強く感じた。

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著者プロフィール

静岡市生まれ。大学卒業後、NHKディレクター、編集プロダクションのコピーライターを経て、ライターに。2002年からフィギュアスケートの取材を始める。フィギュアスケート観戦は、伊藤みどりさんのフリーの演技に感激した1992年アルベールビル五輪から。男女シングルだけでなくペアやアイスダンスも国内外選手問わず広く取材。国内の小さな大会観戦もかなり好き。自分でもスケートを、と何度かトライしては挫折を繰り返している。『フィギュアスケートLife』などに寄稿。

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