求められる臨場感とその背後の危険性 球場に来るファンにも必要な安全の意識

篠崎有理枝

大観衆が集まる球場で起きた不幸な事故

GW期間中のプロ野球の各球場には、多くのファンが来場し、にぎわいを見せた=5月3日、コボスタ宮城 【写真は共同】

 今年も大型連休には多くのファンが野球観戦を楽しみ、5月2日〜6日の5日間でのべ98万315人がスタジアムを訪れた。本来は楽しい思い出になるはずの野球観戦で、試合観戦中のファンがファウルボールを顔に受けて失明してしまうという不幸な事故が起こってしまったのが、2010年8月21日。3万3375人が集まった札幌ドームの北海道日本ハム対埼玉西武戦である。

 ここ数年、ネットを取り払った座席やフィールドシート、あるいは仲間で楽しみながら試合を見られるボックスタイプなど、新しい観戦スタイルを楽しめるシートが増えている。多様な楽しみ方ができる反面、「グラウンドに近い」「ボールから目を離してしまうことが多い」など、危険性が多いことも確かだ。

スタジアムに増える新シート

西武プリンスドームの「フィールドビューシート」をはじめ、各球場ではグラウンドレベルに臨場感ある座席を設置している 【(C)SEIBU Lions】

 現在、ほっともっとフィールド神戸を含む本拠地13球場のうち、11球場でフィールドシートが設置されている。ネットもなく、グラウンドレベルにあるこのシートは、最も危険性が高いと思われる。横浜DeNAの本拠地・横浜スタジアムの「エキサイティングシート」ではヘルメットの着用を呼びかけ、グラブを設置。西武の本拠地・西武プリンスドームでも「フィールドビューシート」ではヘルメットの着用を呼びかけているものの、ほとんどの観客が着用していないのが現状だ。

 物販の販売では両球団とも配慮しており、イニング中は売り子がエリア内に入らず、イニング間に販売を行う措置をとっている。千葉ロッテの本拠地・QVCマリンフィールドには、防護ネットを設けた「フィールドウイングシート」を設けている。安全面はもちろんのこと、円滑な試合進行と観客の安全のために日本野球機構が定めている「観戦契約約款」に基づいたもので、観客の乱入等の防止に配慮されている。

危険性の少ない場所に設置される新シート

 西武プリンスドームでは、今シーズン6年ぶりに新シートが設置された。グループ観戦向けの「パーティーテラス」と足を伸ばして観戦できる「ふらっとリビング」だ。これらのシートは、比較的安全なスタンドの最上段に設置されている。従来からある「ダグアウトテラス」もライナー性の打球が飛んでくることは少ないとされる一塁、三塁ベンチの真上にある。 

 横浜スタジアムでも、テレビモニターに流れる試合映像を見ながら観戦できる「ベースボールモニターBOXシート」や、床で寝ころんで観戦できる「リビングBOXシート」など今シーズンから4種のシートが新設された。「ベースボールモニターBOXシート」では、画面をタッチすると中継映像だけでなく、ブルペン映像やベンチ映像などに切り替えることができ、画面を操作したり、映像を見ていれば、当然ボールから目を離すことになるが、このシートもスタンド最上段に設置されており、打球の危険性は少ない場所だろう。

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著者プロフィール

東京都狛江市出身。川村学園女子大学卒業。学生時代からプロスポーツチームで刊行物の編集に携わる。 卒業後は、スポーツ新聞社、雑誌社に勤務。現在はフリーで執筆活動を行う。

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