求められる臨場感とその背後の危険性 球場に来るファンにも必要な安全の意識

篠崎有理枝

求められるのは安全性ではなく臨場感

横浜スタジアムに設置された「プレミアムテラス」スタンド最上段に設けられているため、危険性は少なくなっている 【(C)YDB】

 もちろん球団も注意喚起を怠っているわけではない。DeNAの鐵智文広報部部長は「野球が好きなお客様の需要に対して新シートを提供するのは、球団の姿勢として大事だと思います。実際、週末の試合では(これらの席は)ほぼ完売になり、需要もあると思います。一方で初めてスタジアムに連れて来られた方もいらっしゃると思いますので、注意喚起を行って野球をしっかり見てもらうというところは促していきたいと思っています」

 さまざまな新シートが新設されているが、あくまで「野球を見ること」が本質である。野球にあまり興味がない人たちが「知人に誘われたから」「ビールが飲みたいから」などの理由でスタジアムを訪れ「野球観戦は楽しい」と感じ、再びスタジアムに足を運んでくれることが、球団としても本望だろう。一方でスタジアムでの観戦に慣れているファンは、さらなる臨場感や新しい観戦スタイルを望んでいる。しかし、そこには危険がつきものだということを認識しなければならない。

「ただ野球を見るだけではスタジアムに来ていただけない時代になってきている。しかし、選手が行うファンサービスには限度があり、それ以外で野球場に足を向けていただけるサービスとして、独自の新シートを作るなどのサービスが必要だと考えています」

 埼玉西武ライオンズ事業部次長兼ドーム部次長の本村剛氏はこう話す。

「ファンの方たちは臨場感を求めていて、球団としてもそれに応えたいと思っています。しかし、これまでにも増して安全面も確保となると、なかなか難しいところです。場内アナウンス、ビジョンを使っての告知、笛吹き、声掛け、オルガンでの注意喚起など、今までやってきたことをさらにしっかりとやっていくことを心がけていきたいと思っています」(本村氏)

より安全で楽しいスタジアムに必要な認識

 臨場感や新たな観戦スタイルを求めるファンは多い。球団もその要望に応え、各球場で新シートが増えている。ファンから球団に対し、グッズ、選手に対する要望、試合観戦に対する要望はあるものの、安全面に対する要望はほぼないという。フィールドシートでのヘルメット着用率が少ないという点も、ファンの安全意識の低さの表れではないだろうか。

 もっとファンも、ボールの飛んでくる速さやライナー性の打球の威力を認識し、安全意識に気を配るべきだろう。一方で、球団側も、従来通りの安全策を引き続き強化・継続していくとともに、ファンの安全への意識を変える対策が必要だ。スタジアムでの野球観戦が、より安全で楽しいものになるよう願いたい。

2/2ページ

著者プロフィール

東京都狛江市出身。川村学園女子大学卒業。学生時代からプロスポーツチームで刊行物の編集に携わる。 卒業後は、スポーツ新聞社、雑誌社に勤務。現在はフリーで執筆活動を行う。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント