アンカーとして新境地を拓いた小林祐希 “チーム小林”による自己改造の成果とは

中田徹

ルーズボールの奪い合いに勝ち続ける

ヘーレンフェーンの小林祐希はADOデンハーグ戦でフル出場。「アンカー」として新境地を開いた 【Getty Images】

 オランダリーグのウインターブレークが明け、シーズン後半戦が始まった。ヘーレンフェーンの小林祐希は現地時間14日、「アンカー」として新境地を拓いた。チームは2−0でADOデンハーグを下し、4位の座を維持した。

 時折、アーベ・レンストラ・スタディオンに吹雪が舞う中、小林は相手の攻撃の芽を摘んでは、正確なパスを供給し続けた。ADOデンハーグのフォーメーションは4−4−2。前線のシステムは2トップ+1シャドーだった。4−3−3のヘーレンフェーンは2人のセンターバック(CB)とアンカー(小林)が「1対1」でADOデンハーグの前線を封じる形となった。

 小林が対峙(たいじ)したのは、同じ「21番」を背中に付け、チャンスメーカーとして知られるエドワルド・デュプランだった。ADOデンハーグのロングボールに対し、小林はセカンドボールを拾えるポジションにスプリントし続け、デュプランとのルーズボールの奪い合いに勝ち続けた。サイドにデュプランが逃げても、小林の鋭いアプローチが効いて、彼にボールを持たせなかった。結局、デュプランは76分にベンチへ退いた。

 味方のセンターバック2人が、ADOデンハーグのプレッシングを受けても、小林はパスコースに顔を出し、ターンやワンツーを使って相手をいなして局面を打開してボールを前に運んでいった。

「もっと前に行きたいけど、ポジションがポジションだからしょうがないね。これがオランダの“6番(アンカー)”の役割なのかもしれないですから。相手もあることだから一概によかったとは言えないけれど、守備の対応とか、囲まれたときのボールの置きどころというのは、オフで取り組んだことがそのまま出たと感じました」

真剣に守備の対応を考え始めた

 この日光った鋭いアプローチについて、小林はこう語った。

「それはもう俺の“チーム小林”に感謝しています。俺は別に言われたとおりにやっているだけなんで」

 小林は昨年5月頃から、「フィジカル」「メンタル&ブレイン(脳)」「食事」という3つの柱からなる“チーム小林”を形成し、専門家のアドバイスを受けながら自己改造に務めている。その成果がオフ・ザ・ボールの質の高い動きにつながったのだ。以前、小林は「俺は必ず『パス・アンド・ゴー』をやっている」と語っていたが、その「一歩」のスピードと動きの大きさも格段に上がっている。

「(“チーム小林”を組んでから)もう半年。(日本)代表に初めて入った時ぐらいから、真剣に守備の対応というのを考え始めた。でも、『(自分のものにするまで)半年かかるんだ』っていう感じですかね。しかし、今日良かったからと言って、次も(良い)というわけではない。チーム全体のハメ方が良かったから、俺のところでボールを取れたというのもあるし、予測が良かったのもある。相手のレベルが上がった時に同じような対応ができるかどうかが課題なので、今日の試合は俺の中では一度リセットします」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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