サンマがなくてもイワシだ。静かに進軍。「競馬巴投げ!第129回」1万円馬券勝負
「魚は死なない限り成長する」という噂は本当か
【写真1】サトノダイヤモンド 【写真:乗峯栄一】
例えば人間なら18歳位でだいたい体長がピークに達し、生殖能力も備わるからこれで“成体”到達だ。あとの月日は落ちる体力・知力・生殖能力を経験値で補う。「胸ポケットから札束チラつかせるという、これも経験からくる生殖能力だ」などとウソブき、それでも“精力の下降線をカネでカバー”というのも80年が限度で、これが「人間の一生」だと言われる。
競走馬でも大体そうだ。2歳になれば体長はほぼ最高点に達し、生殖能力も得る。いわゆる成体だ。あとは調教などで筋力をつけ、レース慣れという経験値も身につけて、競走能力を高める。ただ競走馬というのは“落ちる精力をカネでカバー”という訳にはいかないから、人の助けによって「こんな名馬の子供をさずかるなんて大変な幸せなんだぞ」というアプローズを後押しに、しかしそれも6歳あたりがピークであとは下降線、30歳ぐらいになると生きていることさえ珍しくなるという、これが「馬の一生」だ。
例えばセミにも17年も地中に潜っている種がいる。でもこの間は幼虫だ。体も成体より小さく形も違う。しかしひとたび脱皮して成体となり、2週間ミーンと鳴いて生殖すると瞬く間に一生を終える。成長期17年というのは人間と殆ど同じ長さだが、大人になることは死を意味する。「大人なんて嫌いだ!」と尾崎豊のように叫ばなくても、セミは「大人になったら終わりだ」と自覚している。
イトウという3メートルにもなる巨大淡水魚がいる。このイトウは元々サケだ。遙か昔はサケと同じく遠い海から産卵生殖のためにエニセイ川源流あたりまで遡り、オスが大口開けて「産卵してえ、すぐ精子かけるからあ!」と叫び、メスも負けずに大口開けて「何だかわたしもその気にぃ!」と呼応して体外生殖、それが済めば「ああ幸せな生殖だった」と微笑みを浮かべて死んでいく、そういうサイクルの一生だった。ところがある日、イトウの先祖の一部が「オレ、来年もやりてえ」と言う。「来年もやりてえって、お前、また命懸けの遡上やんのか」と仲間が驚くと「ううん、あれはしんどいからイヤ。オレ一年この辺でウロウロ過ごす」と川の中流下流で一年過ごして、産卵時期になるとまた源流に戻る。これがイトウだ。そして何年も淡水で生きるイトウは年々巨大化し、体長70センチだったのが3メートルにまで成長する。魚は死ななければ成長する。成体でも毎年成長するという噂がここから出た。
こういう疑問を長年もっていて、当コーナーにも一度書いた。
つまり陸上のこと(たとえば翌日の天気とか台風の進路)はずいぶん分かるようになってきたが、地中のこと(地震予知など)が分からないように、地上生物の生態はかなり分かってきたが、海中生物のことは分からないことだらけなのである。