今までのマイナスのお礼分 「競馬巴投げ!第126回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

ゴルフやボウリングの球の話

[写真1]距離短縮で巻き返したいファントムライト 【写真:乗峯栄一】

 駅のホームで50円玉を落とした。「あ」と言いながら拾いに行くと、その転がった50円玉のすぐそばに立つ女も「あれ?」という感じで、その硬貨を見詰める。女もそのとき財布を触っていた。ほんの瞬間だが「え、それ私の?」という表情が見えて気まずかった。「これオレのだよな?」と自問自答しながら、女性の足下の50円玉を拾った。気が弱い。「別に50円に困った生活をしている訳じゃないけど、自分が落とした50円玉を拾うのはごく自然な行為で、もしあなたが落とした50円玉なら、そのときは当然拾わない男だよ、オレは」ということを瞬時に、それも視線と表情だけで一生懸命イクスキューズしている。でも、この長文に渡るニュアンスがなかなか相手には伝わらない。難しい。

 全然話は変わるが、ずいぶん昔、学生時代だったか、遊びのようなコースで一度だけゴルフをしたことがある。「これがゴルフっちゅうもんか」と素人三人で貸しクラブを振り、一応チョロッと飛ばしてボールの所に行く。「これ、オレのボールか?」と二人に聞くと「まあ、そんなもんだろ」てなことを言うから、またチョロッと打って、一応旗の立っている穴ボコに近づく。すると隣のホールから男が血相変えて飛んで来た。

「これは私のボールだ。ここに(16)というマーク付いてるだろ。なんで自分のボールを確かめてから打たないんだ。きみたちはゴルフを知ってんのか」とこんこんと説教される。

 しょぼくれながら「へえ、人のボール打っちゃダメなんだ、でもよう、それだけゴルフ詳しいのなら、隣のホールに打ってくるなよな」

「おう、そうやそうや」とブー垂れた。

[写真2]トゥインクルは2000mで新味発揮となるか 【写真:乗峯栄一】

 中学生の頃の初めてのボウリングのときもそうだった。後ろのボール置きから一つ選んで、ゴロゴロ台の上に置くのは教えてもらった。で、そのボールを投げると見事なガター。「もう一球投げられるぞ」てなことを後ろの仲間が教えてくれるので「あ、そう」などと喜び、ゴロゴロ台にある適当な大きさのやつを一つ持ち上げて、投げてみたら3本ほど倒れたので、キャッキャ喜んでいると、「なんで私のボールを投げるのよ」と隣のレーンのお姉さんから強烈に怒られた。

「一球投げて向うへ行ってしまったから、2球目はどの玉でもいいのかと……」などと言っていると「投げた玉はここに返ってるわよ」とさらに怒られ、怒られている最中に一回目に投げた玉がゴロゴロゴロと返ってきた。「なるほどなあ。ボウリング場ってうまく出来てるなあ」と感心する。お姉さんはまだ腕を組んで怒っていたが。

1/3ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント