箱根駅伝からトライアスロンで五輪金へ 転向3カ月で強化指定、異例の新星登場

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関係者も熱視線を送る“新星”

箱根駅伝からトライアスロン界の“新星”へ――陸上から転向した大谷遼太郎が目指すものとは!? 【スポーツナビ】

 かつて箱根駅伝の“花の2区”を任された男が、トライアスロン界の新星としてにわかに注目を集めている。今春、競技転向したばかりの大谷遼太郎(埼玉県トライアスロン連合)だ。青山学院大時代に主力として活躍した25歳は、3月に行われた日本トライアスロン連合(JTU)認定記録会(スイム400メートル、ラン5000メートル)で、参考記録ながら歴代3位の好記録をマーク。転向してから3カ月足らずで強化指定の資格を取得し、関係者の度肝を抜いた。

 10日には大阪トライアスロン舞洲大会で、いよいよ大会デビューを果たす。「枠にはまったアスリートでなくて、新しいアスリートの形を何か伝えられたら」。目指すは東京五輪の金メダル獲得だ。

 トライアスリートとしての素地は十分にある。小学校までは水泳に打ち込み、5年生の時には自由形で全国大会に出場した実力の持ち主。浦和実高で陸上を始めると、3年時の全国高校総体1500メートルで5位入賞。青山学院大では学生一流の証左である5000メートル13分台、1万メートル28分台の自己記録を持ち、4年時の箱根駅伝では2区区間5位と快走した。卒業後はトヨタ紡織で陸上を続けたが、「五輪になんとしても出たい」と、1月のニューイヤー駅伝を最後にトライアスリートへと転身した。

 高い潜在能力は、初挑戦した認定記録会で証明済み。単純比較はできないが、トライアスロンでのラン10キロ28分台は、世界トップレベルに相当する。すでにJTUの強化関係者から一目置かれた存在。そのパフォーマンスを間近で見たJTUの中山俊行次世代強化リーダーも「国内ではこのレベルで走れる人はいない。バイクでケガをすると戻って来られないので、じっくり(体を)つくって実績を出してもらいたい」と期待を寄せている。

“営業力”で整い始めた競技環境

専門的な練習は初めてとなるバイクやスイムも、アスリート仲間の協力を得て順調にこなしている 【写真提供:大谷遼太郎】

 しかし、注目されるのはそのポテンシャルの高さだけではない。青山学院大の恩師、原晋監督ばりの“営業力”を生かした、型破りなアスリートでもあるからだろう。

 練習は、湘南ベルマーレ所属で自らもトライアスリートである若杉恵夢ら旧知のアスリート仲間が、大谷の本気を買ってボランティアで協力してくれた。金銭面では、自らSNSなどを駆使して直接企業に売り込みをかけているほか、関係者の集まるイベントに進んで足を運び支援を求めている。「めっちゃ疲れます(笑)。出っ放しで練習できないこともあります」と本音もチラリ。それでも、既にトライアスロンブランド「HUUB(フーブ)」からウェットスーツ提供を引き出したのをはじめ、現在複数の企業から支援の話があるというから驚きだ。いくらポテンシャルがあるとは言え、まだレースにすら出ていないにもかかわらず、である。

「組織(実業団)に所属して、何もかもやっていただいていくのが当たり前になってしまっていました。でも、フリーになった時に、今までのことが全然当たり前じゃなかったんだと分かったんです。自分で営業に行ったり、向こうからフェイスブックで(連絡が)来たりしますが、それも全部、(10日の)大阪大会次第。原監督からもご紹介の話はあるのですが、そういうところは甘えない、頼らないようにはして、自分でつかみ取っていきたいです」

「(結果を)監督や環境のせいにしたくない」と、未経験の競技にもかかわらず、いきなりフリーで新しいキャリアをスタートした大谷。収入もなければ用意された練習場所もない。しかし、周囲のサポートを得ながら、着々と環境を整えつつある。

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