上田藍「突き抜けたメンタル」で進化中 トライアスロンの第一人者が見据える頂

スポーツナビ

32歳ながら国内では他を寄せ付けず

レース後半に追い上げ3位に入った上田藍。32歳となった今も、日本の第一人者という地位は揺らがない 【写真は共同】

 多くの競技において、32歳という年齢はベテランと位置づけられる。アスリートにとって体が最も動くのは20代。中には10代が身体的にピークという競技すらある。ましてやスイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロと過酷な条件で競うトライアスロンならば、なおさら若い方が有利なように思える。

 しかし、日本女子の第一人者である上田藍(ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター)は、32歳となった今も進化を続けている。14日に行われたITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会では、1時間57分25秒で3位となり、一昨年の2位以来2年ぶりに表彰台に立った。

「結果についてはうれしいんですけど、1位の(グウェン・)ジョーゲンセン選手(米国)と1分以上の差があったということ、2位争いをしていたアシュリー・ジェントル選手(オーストラリア)とはスプリント勝負に持ち込みながら、足がもつれて最終的に3位になってしまったというところでは課題も見つかりました。とはいえ、表彰台に上れた充実感とほっとした部分はあります」

 苦手なスイムではトップと59秒差の50位スタート。しかし、強化してきたバイクでは3周目(全9周)で先頭集団に追いつき、そのままその位置をキープすると、ランの序盤では首位に立つ。1キロ付近で大会4連覇を果たしたジョーゲンセンに抜かれたものの、25歳のジェントルとは最後までし烈な2位争いを繰り広げた。他の日本人選手がランで順位を下げていく中、上田は粘り強いレースを展開し、さすがの強さを見せつけた。リオデジャネイロ五輪の代表メンバーは19日に発表されるが、選出はほぼ確実だろう。

“協力体制”を築く能力

 3位という結果によって、自身の存在を他の選手にあらためて印象づけられたことは、上田にとって大きい。トライアスロンは個人戦であるが、勝利するために時として選手同士の“協力体制”がカギとなってくる。今大会における上田の3位という結果は、2位ジェントルとの連携がうまくはまったことによる。2人はスイムをほぼ同タイムで終えると、続くバイクを得意とするジェントルが、上田を引っ張る形で一気にペースを上げる。風圧による体力の消耗を避けるために、逐一前後を入れ替え、協力し合いながら先頭集団との差を詰めていった。

 こうした体制を築くためには、実力が認められていなければならない。今回の結果によって、他国の選手から注目度が増すのはいわば必然であり、今後はより選択肢が増えてきそうだ。上田自身も「表彰台に上がった選手ということで、目立つようになってくると思うので、多くの選手とコミュニケーションを取れるようになるという意味でも良かった」と、その意義を説く。

 上田を指導する山根英紀コーチも、それに同調する。

「今回もなんですが、なぜか他国の選手と連携ができているんですね。彼女はこの会場に着いた時点で自分と同じような追い上げ型のスタイルの選手と話し合ったり、声を掛け合ったりして、体制を作っていた。海外の選手たちも彼女がいれば一緒に行けるというのもあるでしょうし、彼女もこの選手がいれば一緒に行けるというのもある。国際大会ではそういうことも重要になってくると思います」

 そして山根コーチは、このような部分にこそ上田がいまだに成長し続ける理由があると感じている。

「若い選手は勢いやスピードはある。ただトライアスロンには経験値も重要ですし、レース戦略を組み立てる能力も必要です。そういう意味ではじっくりと育ててきて、今は良い形で世界と戦えるようになってきていると思います」

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント