年度替わりの収穫祭マカヒキ 「競馬巴投げ!第117回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

「マンション管理組合」は大変だ

[写真1]2歳王者リオンディーズ、弥生賞も勝って無敗で皐月賞へと駒を進めるか 【写真:乗峯栄一】

最近、横浜の方ではマンションの基礎杭が固い岩盤まで届いておらず、業者によって偽装工作されていたという事件があった。高層の棟がいくつもあって、千人ぐらいは住んでるんじゃないかと思われる立派なマンションだ。

 結局、全棟建て替えということに決まったようだが、こういうとき、ぼくなど「マンション管理組合」は大変だろうなあとまず思う。「管理組合を補佐する」という専門会社というのがあって、そこから人材は派遣されているはずだが、それにしても理事長や理事はマンションの一員の、いわば素人が手弁当でやっていると思う。理事長や理事は何か本業を持っているはずなのだ。でもこんな大きな事件があると、本業そっちのけでかかずらなくてはならない。いや、大変だと思う。

 10年ほど前、福知山線脱線事故で百数十人の方が亡くなった事件もあったが、もちろん電車に乗り合わせた人も不幸だったが、列車に飛び込まれたマンション住人も災難だった。あの事故では結局マンション全体をJR西日本が買い取るとうことで落ち着いたようだが、転居までの間、住民がどこに住むか、被害者が出たうちの保障はどうなるのかと大変だったはずだ。

マンションで起こる意味不明の出来事

[写真2]こちらも現在2戦2勝で無敗のマカヒキ、金子ハワイ馬がクラシックで大暴れだ 【写真:乗峯栄一】

 ぼくは300戸ほどの老朽マンションに住んでいるが、管理組合副理事長というのを数年やったことがある。別にやりたくはなかったが、輪番制で回ってくるので仕方ない。しかも理事長以下、ほとんどの理事は昼間仕事に出ているので、明るいうちに何か事故があると、とりあえず部屋に閉じこもって何やら訳の分からない風の生活をしているぼくのところに一報が入り、何が何やら分からないまま“事故の収拾”に向かわねばならない。

 耐震偽装や列車飛び込みのような大きな事故はなかったが、それでも意味不明の出来事は何回かあって、ほとほと参った。

 ある日の午前中、マンション内にある百台ほどの駐車場で「キーッ、ガツン、キーッ、ガツン」という大きな音が3回ぐらい続く。「何事?」とベランダに出てみると、黒塗りの、うちの団地にしては高級な車が直進しては前の車に当たり、V字にバックしては後ろの車にガツンと、それを繰り返しているのだ。何?うちの団地に恨みを持つ者の自暴自棄犯行?などと、とりあえず下に降りてみると、やっと止まった黒塗り高級車の運転手は車から降りてきて、ただしょんぼりしている。「パニックになってしまいまして」などとボソリと言う。

「パニックになってもブレーキぐらい踏めるんじゃないの?」という言葉は飲み込んで、管理組合室に入ってもらってお茶を勧めると、大のお父さんが泣き出してしまった。もう、訳が分からん。

 警察が来て「団地内の事故で、基本、民事なので」などとお決まりのセリフを言う。

 理事長も勤め先から早退してきて「わたしは車のディーラーをしているので、車の損害賠償については詳しいです」と胸を張るので安心していたら、これが後日物議をかもす。うちの管理組合には元理事長を中心に「顧問会」のようなものがあって、みんな定年退職した暇な人たちなので(ぼくらからみると)何かにつけてイチャモンをつけてくる。

「今度の理事長は自分が車のディーラーをやっていることをいいことに公私混同をやっている」などとクレームをつけたのだ。どっちかというと、事故の賠償そのものよりも、こっちのイチャモンの方が大きな問題になってしまった。ああ、鬱陶しい。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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