AJC杯、雪分からなくてボワラクテ 「競馬巴投げ!第114回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

「競馬」と「雪」と「泌尿器科」の不思議な縁

[写真1]昨年のダービー2着馬サトノラーゼン、ここは人気になるだろう 【写真:乗峯栄一】

 いま金曜夜なのだが、土日に大型寒気が来るとかで、競馬が予定通り開催されるのかどうか気を揉んでいる。

 そうはいっても、開催されるものとして予想しなければいけないのだが、個人的には、こういうとき、泌尿器科の話から進めねばならない。気づいている人は少ないと思うが、「競馬」と「雪」と「泌尿器科」は不思議な縁で結ばれている。

 これは前にも書いたが、持論なので、またしても言わないといけない。

 例えば人間なら、どんなに飛び抜けた女子選手でも、オリンピック陸上400メートルあたりで男子を蹴散らして優勝するということは考えられない。というより、今のルールでは「男子400メートル」と明記してある。男子が「女子400メートル」に出られないのと同じく、女子が「男子400メートル」に参加することは出来ない。これはある意味公平だ。

「馬の場合は人間ほど男女能力差がない。なぜなら草原を肉食動物から逃げるとき、牝馬(ひんば)が牡馬(ぼば)に劣っていたら牝馬ばかりがライオンの餌食になるから」という意見がいまのところ支配的だ。たとえばジャパンCだと、ここ7年のうち5年は日本牝馬が勝っている。ローズキングタムのときも、脚勢的にはブエナビスタの方が優位だった。圧倒的に牡馬が勝ったのは、最近では一昨年のエピファネイアぐらいのものだ。もう「牝馬2キロ減」の優遇措置はなくしてもいいんじゃないか。

 特に問題なのは、牡馬はどんなに頑張っても“牡馬三冠”が最高の栄誉だが、メス馬には“牡馬三冠・牝馬三冠、合わせて六冠馬”という可能性があるということだ。「わたし連闘でオークスとダービー両方制しました」という言葉はオス馬には不可能だが、メス馬には可能だということだ。牝馬だけ“三歳六冠”の可能性がある。ここがおかしいと思うのだ。

「ほら、ごらんの通り女盛りだから」

[写真2]一昨年ダービー9着後は京都記念2着くらいしか好走がないスズカデヴィアスだが…… 【写真:乗峯栄一】

 たとえば、もし生殖器あたりに異常を感じたら、女性の場合はとりあえず婦人科に行く。「婦人科」という看板は街のあちこちでよく見る。女性たちは(こっちの思いこみかも分からないが)そんなに恥ずかしさを感じずに、というよりむしろ誇らしげに「わたし、婦人独特の悩みを感じてるの、何といっても、ほら、ごらんの通り女盛りだから」という趣きを発しながらこれらの病院に入る。

 男の場合はどうだ。「婦人科」に対抗する「殿方科」はないから、勢い「性病科」とか「泌尿器科」ということになる。そういうことになるが、こういう医者に行くとき「オレ、泌尿器に悩み抱えてるんだ、何といっても、ほら、ごらんの通り男盛りだから」と胸を張る雰囲気が出てこない。そして「婦人科」を受診できるのは女だけだが、「性病科」や「泌尿器科」は男でも女でも行ける。ちゃんと辞書でも調べた。「大辞林」によると婦人科は「女性生殖器を診察する科」で、泌尿器科は「男性および女性の泌尿器と男性生殖器を診察する科」となっている。

「今週、婦人科最強戦(別名オークス)があるから、わたし出るの」と女が言う。

「オレは来週の泌尿器チャンピオン戦(別名ダービー)に出る」と男が対抗して胸を張る。

「あ、わたし、来週の泌尿器チャンピオン戦も連闘で出るわよ」

「何言ってんだ、泌尿器チャンピオン戦で男が女に負けたことはこれまで一度もない」

「あら、そーお? でもわたし、泌尿器にも結構自信あるのよ、ふふふ」

 婦人科女王は、男ばかりの泌尿器待合室でも臆することなく堂々と行動し、診察ベッド前では強烈な登り脚まで披露して、史上初の婦人科・泌尿器科連闘チャンプが誕生すると、つまり07年のウオッカ・ダービー戴冠というのはそういう意味を持っている。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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