橋口厩舎ジワリ千勝へ◎ミッキー 「競馬巴投げ!第113回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

予想の神様ではないか

[写真1]一昨年幸せをくれたエキストラエンド、2年ぶり京都金杯Vを目指す 【写真:乗峯栄一】

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 と言いつつ、昨秋から始めた「1万円勝負」まだ一回も当たっていない。ゆゆしき事態だ。何とかしないといけない。

 数年前、センター試験直前に「現代文は遠藤周作の小説が出る」とインターネット「2チャンネル」に書き込んだ者がいて、その通り遠藤周作の小説が出題されたものだから「試験問題漏洩ではないか」と話題になった。

 これが競馬なら「2016年のダービーは○○が勝つ」と一年前から予想して、その通り○○が勝ったら、「問題を盗んだんじゃないか」とは言われず、「予想の神様ではないか」と言われたりする。

 警視庁の取り調べに対し、書き込んだ人間は「遠藤周作は過去出題されたことがないし、純文学はここ数年出題から遠ざかっていたので」と供述して、「犯罪嫌疑なし」ということになった。もしこのとき「文殊菩薩が夢枕にお立ちになり“現代文は遠藤周作だぁ”とお告げになったのじゃぁ」などと叫びながら踊ったりしたら「こいつ怪しい」と起訴まで持ち込まれていたかもしれない。

 競馬の場合は「JRAと結託して、ダービー馬はどれにするか、事前に協議していたのではないか」という嫌疑は難しい。そこまでして、つまりJRAや厩舎全体や騎手全体を巻き込んでまで「ダービーは○○が勝つ」予想する価値があるかどうかというのがまず問題になる。「一年前に、ただ一頭だけ予想してダービー馬を当てれば1億円当たる」とかということになれば、そういう嫌疑も可能かもしれないが。

 つまり言ってみれば「犯罪嫌疑なし」は「予想の神様」を意味する。「まるで問題を盗んだかのような予想」は予想屋としての最高の誉め言葉となる。検察あるいは庶民を納得させるそれらしいことを言えるかどうか、これが「犯罪」と「予想の神様」を分けるキャスティングボートとなる。

イチャモンが通るのは、力関係が強いものが言ったときだけだ

[写真2]近走不振のダイワマッジョーレだが、まだまだ地力は見限れない 【写真:乗峯栄一】

 去年のセンター試験では、「世界史」で正解が2つあるミスが出た。

 次の(ア)(イ)の言葉を(1)〜(4)の選択肢より選べという問題だ。

「貞享暦は、中国の(ア)の時代に、(イ)によって作られた授時暦を改訂して、日本の実情に合うようにしたものだ」

(1)「ア−元・イ−顧炎武」
(2)「ア−元・イ−郭守敬」
(3)「ア−清・イ−顧炎武」
(4)「ア−清・イ−郭守敬」

 まったく何のこっちゃ?という感じだ。

 でもちょっと調べてみた。

 郭守敬は中国元時代に授時(じゅじ)暦を作り、江戸時代(中国清の頃)に日本人がその授時暦を改訂して出来たのが貞享(じょうきょう)暦ということらしい。

 普通に解釈すれば「貞享暦は、中国の(元)の時代に、(郭守敬)によって作られた授時暦を改訂して、日本の実情に合うようにしたものだ」となるはずだ。つまり普通に考えれば(2)が正解だ。

 それを無理矢理解釈すれば「貞享暦は、中国の(清)の時代(つまり日本の江戸時代)に、(中国元の時代に郭守敬)によって作られた授時暦を改訂して、日本の実情に合うようにしたものだ」と言えなくもないんじゃないの? だから(4)も正解じゃないのかというイチャモンである。

[写真3]2走前のカシオペアSが鮮やかだったトーセンスターダム、おそらく一番人気か 【写真:乗峯栄一】

 でもこの問題を見たとたん、まだ試験中なのに手を上げて「試験官さん、これ、読みようによっては正解が2つありますよ」と“もの言い”をした受験生がいたという、それの方がよっぽど驚きだ。もう、その時点で「キミ合格! 百点満点!」と指さしてもいいぐらいだ。それに加えて「こんなことでイチャモンつけるやつはロクな大人にならんぞ」と付け加えてもいいぐらいのものだ。

 しかしセンター試験主催者は「それもそうだなあ」と納得して(2)も(4)も両方正解にしたという。「お前、常識っちゅうもんがないのか! こんなのでイチャモンつけるやつは即×じゃ」とどうして言えなかったのか。

 世の中なあ、そんなイチャモンが通るのは、力関係が強いものが言ったときだけだ。オジサンなんかは、そこんとこ、よーく身に染みて分かっとる。

「ゴール線が真っ直ぐなのがどうにも納得できん。内ラチと外ラチの間でどうして直線が引けるのか、今日は満月で月の引力によって、2次元多様体の地球上にはちゃんとした直線が引けないはずだ。Uの字のようにゴールラインはうねっていないといけない」などと言って、裁決委員に取り次いでくれと言ったことがあるが、そんなこと、取り上げてももらえなかった。

1/3ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント