新女傑にヌーヴォ(新)レコルト。「競馬巴投げ!第109回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

メス馬はオス馬より弱いというのは本当なのだろうか?

[写真1]3連勝中のウインリバティ 【写真:乗峯栄一】

 考えてみれば、ジェンティルドンナが有馬記念を勝ったのが昨年の暮れであり、まだそんなに時間が経っている訳ではない。しかし、ウオッカ→ブエナビスタ→ジェンティルドンナと続いた“女傑時代”が途切れたという感覚がある。「2000年代・女傑第4世」は今年現れるだろうか。

 ミッキークイーン、ショウナンパンドラがJCに回るらしいから、そちらの方が優先候補かもしれないが、女王杯を境に急上昇する牝馬もなきにしもあらずだ。

 しかしそうはいうものの、というか、そうはいいながらと言った方がいいのか、文脈はガタガタだが、ぼくが常々考えているのは、まったく真逆のことだ。

 競馬における「牝馬2キロ減」という牝馬優遇措置はほんとに必要なのだろうか? 基本的にメス馬はオス馬より弱いというのは本当なのだろうか?

 メス馬がオス馬より遅いということになれば、サバンナでライオンに食われる馬はメスばかりということになる。オスの数が減っても次世代個体数にはすぐには影響ないが、オスばかりでメスがほんの少しということになれば、その群れはすぐに絶えてしまう。

生殖に関しては、基本的にメスが大事

[写真2]秋華賞2着クイーンズリング、ミッキークイーンに迫る脚は見どころ十分だった 【写真:乗峯栄一】

 人間の陸上競走で男子トップ選手が女子選手に負けるということは、タイムからいってもまず考えられないが、ノミやカマキリやクモならどうだ。「ノミの夫婦」と言われるように、ノミではオスの方がメスより小さい。カマキリやコガネグモ、ジョロウグモではオスはメスの半分以下の大きさで、しかも交尾のあと大体オスはメスに食い殺される。

 深海魚のチョウチンアンコウではオスはメスの10分の1程度の大きさで、メスに寄り添ってかろうじて生きている。こういうメスに寄生して生きるオスは「矮雄(わいゆう)」と呼ばれる(“ヒモ”とは言わない)が、生物界では決して珍しくない。しかしメスがオスより極端に小さく、オスに寄生して生きている「矮雌(わいし?)」と呼ばれるメスはどの生物種にも見当たらない。

 生殖に関しては、基本的にメスが大事であり、オスは親と同一遺伝子の子供ばかりが出来ない(有性生殖)ように“一刺し”の機能を持つだけである。

 アリやハチでは生殖を担うのは女王アリ、女王バチだけである。女王アリと働きアリが競走したら、どちらが早いかより、いつ食い殺されるかが焦点になる。

 哺乳類では大体オスの方がメスより大きいが、生殖に参加するために必定の「生殖前オス同士争い」に勝つために必要だからオスが大きくなったのではないだろうか。決してメスに対して優位に立つためにデカくなったのではないはずだ。

これからは「ダービー馬かつオークス馬」が頂点になる

[写真3]ローズSでミッキークイーンを振り切ったタッチングスピーチ、反撃を見せるか 【写真:乗峯栄一】

 たとえばウオッカは64年ぶりに牝馬でダービーを制したと言われる。もちろん彼我の形勢判断を的確に行った陣営は称賛されるべきだが、64年間、毎年毎年複数の牝馬がダービーに挑戦していたわけではない。牝馬には牝馬限定のオークスという“おいしいレース”があるからだ。

 きっと、そのうち「オークス・ダービー連闘制覇馬」が出てくる。しかしこの権利を有するのは牝馬だけだ。牡馬には決して達成できない。これが悔しい。ぼくが男だからなのか、何が何だか分からないが、不公平な気がするのだ。

 これは前にもチラッと書いたが、わが持論なので、またしつこく書く。

 かつて松田国厩舎でキングカメハメハ、ダイワエルシエーロという、同年ダービー馬・オークス馬が並んでいるのを見たことがあるが、あれはまだ常識内のことだ。これからは「この馬はダービー馬かつオークス馬です」というのが頂点になる。

 この感覚、何かに似てるなあとずっと思っていたが、最近ようやくクリアになった。これはつまり婦人科と泌尿器科の関係だ。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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