甦る攻防、面白くないレースからの脱却――改良馬場が競馬を変えるか!?

将来への変化の兆し?

改良馬場がこれからの競馬を面白くする!? 【写真:中原義史】

 安田記念が終了して春のGIシリーズが終了。上半期で括るとまだ6月28日の宝塚記念が残ってはいますが、新年度の新馬戦がスタートして、函館開催も開幕。とりあえずひと区切りがつきました。

 その春のGIシリーズ後半戦、つまり東京競馬場での5週連続GIを振り返ると、なかなかに盛りだくさんでした。

 まず5月10日のNHKマイルCは皐月賞5着のクラリティスカイが優勝。創設20回目の節目の年に、初めて皐月賞出走馬から勝ち馬が誕生しました。

 翌5月17日のヴィクトリアマイルは創設10回目。こちらは昨年3着のストレイトガールがGI初制覇を飾りましたが、3連単の配当が何と2070万5810円。JRAのGI史上最高配当を更新(WIN5を除くJRA史上2番目の高配当)しました。

 続く第76回オークスは桜花賞不出走のミッキークイーンが制し、桜花賞9着のルージュバックが再度1番人気の支持を受けて2着に巻き返して見せ、第82回日本ダービーではドゥラメンテが史上23頭目となる春の2冠馬に輝きました。

 そして安田記念はドゥラメンテと同じ堀厩舎のモーリスが、GI初挑戦で初制覇の離れ業。マイル王の座につきました。

 この5つのGI。それぞれに見応えのある内容でしたが、将来的な観点で、もしかするとレースの質に大きな変化が表れる前兆なのではないか、と感じさせたのが、大波乱となったヴィクトリアマイルでした。

スリリングさに欠けたレースが頻発

 もう何年も前から、競馬ファンの間で当たり前のように使われるようになった用語に「スローペース症候群」があります。

 スタート直後から何事もなく位置取りが決まると、道中はペースが上がることなく淡々と進み、勝負どころでも隊列にほとんど変化がないまま直線を向いて、そこからヨーイドン。で、レースの上がりが34秒前半。いや33秒台の数字が出ることも珍しくありませんでした。

 そうして、当然のことながら上位を占めるのは33秒台前半か、それ以上のラップを駆使する馬達です。中団よりも前でその脚を使う馬がいれば、当然、後方を追走する馬達に出番はありません。スタート直後の並びのままゴールする、というスリリングさに欠けたレースが頻発することになりました。

 勿論、すべてのレースがそうであるとは限りませんが、「スローペース症候群」というネーミングは、そういった平板で、何の変哲もないレース内容を、観ている側が揶揄したものであることは確かです。

 ひと言で、見ていて面白くないのです。競馬がエンターテインメントの側面を持つとするなら、これは見過ごすことのできない事象のはずです。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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