甦る攻防、面白くないレースからの脱却――改良馬場が競馬を変えるか!?
将来への変化の兆し?
改良馬場がこれからの競馬を面白くする!? 【写真:中原義史】
その春のGIシリーズ後半戦、つまり東京競馬場での5週連続GIを振り返ると、なかなかに盛りだくさんでした。
まず5月10日のNHKマイルCは皐月賞5着のクラリティスカイが優勝。創設20回目の節目の年に、初めて皐月賞出走馬から勝ち馬が誕生しました。
翌5月17日のヴィクトリアマイルは創設10回目。こちらは昨年3着のストレイトガールがGI初制覇を飾りましたが、3連単の配当が何と2070万5810円。JRAのGI史上最高配当を更新(WIN5を除くJRA史上2番目の高配当)しました。
続く第76回オークスは桜花賞不出走のミッキークイーンが制し、桜花賞9着のルージュバックが再度1番人気の支持を受けて2着に巻き返して見せ、第82回日本ダービーではドゥラメンテが史上23頭目となる春の2冠馬に輝きました。
そして安田記念はドゥラメンテと同じ堀厩舎のモーリスが、GI初挑戦で初制覇の離れ業。マイル王の座につきました。
この5つのGI。それぞれに見応えのある内容でしたが、将来的な観点で、もしかするとレースの質に大きな変化が表れる前兆なのではないか、と感じさせたのが、大波乱となったヴィクトリアマイルでした。
スリリングさに欠けたレースが頻発
スタート直後から何事もなく位置取りが決まると、道中はペースが上がることなく淡々と進み、勝負どころでも隊列にほとんど変化がないまま直線を向いて、そこからヨーイドン。で、レースの上がりが34秒前半。いや33秒台の数字が出ることも珍しくありませんでした。
そうして、当然のことながら上位を占めるのは33秒台前半か、それ以上のラップを駆使する馬達です。中団よりも前でその脚を使う馬がいれば、当然、後方を追走する馬達に出番はありません。スタート直後の並びのままゴールする、というスリリングさに欠けたレースが頻発することになりました。
勿論、すべてのレースがそうであるとは限りませんが、「スローペース症候群」というネーミングは、そういった平板で、何の変哲もないレース内容を、観ている側が揶揄したものであることは確かです。
ひと言で、見ていて面白くないのです。競馬がエンターテインメントの側面を持つとするなら、これは見過ごすことのできない事象のはずです。