甦る攻防、面白くないレースからの脱却――改良馬場が競馬を変えるか!?

“流れている”のに止まらない馬場

馬場改良の1つの成果となって現れたのが、大波乱となったヴィクトリアマイル 【スポーツナビ】

 ところが、近年の馬場の改良によって、少しばかり様相が変わってきました。

 国際化が進みながら、日本の馬場が硬すぎることを理由に、外国からの遠征馬が減少。年々日本馬のレベルが上がる一方で、日本の競馬は特異な状況下である、といった指摘があります。

 そういう中でも日々、芝そのものや馬場の改良が繰り返され、ここ2、3年の間に少しずつ変化が現れてきました。

 それがひとつの成果として現れたのが、大波乱となったヴィクトリアマイルではなかったか。そう感じられるのです。

 レースのラップを観てみましょう。

 1600mの競馬で、大外枠からハナを切ったミナレットの800m通過が45秒5。1000m通過は56秒9。そして後半の800mは46秒4で上がりの3F=600mが35秒0。通過ラップだけを見ると、従来の感覚ではハイペースです。

 にもかかわらず、勝ったのは先行勢の直後から強烈な末脚を駆使したストレイトガール。逃げたミナレットを2番手から早目に捉えに出たケイアイエレガントが頭差の2着。そのミナレット自身が粘りに粘って勝ち馬からコンマ3秒差の3着に食い込み、後方から最速の上がり32秒8を使ったディアデラマドレは7着に終わりました。

 馬場の内目が極端に良いとか、直線の風向きが云々とか、様々な条件が介在したのだとしても、とにかく前半からハイペースで流れたのに、前が止まらなかった。

 そして、この数字的な結果だけ見ると、たとえハイペースでも前半の位置取りが重要になるのは一目瞭然です。

攻防は甦るのか

 この結果が改良された馬場によってもたらされたものなのか、たまたま起きたことなのかは、現時点ではわかりません。

 ただ、このレースを教訓に、スタート直後のポジション争いが厳しくなりはしないか。また、いわゆる勝負どころでも、直線のコース取りを意識したスペース探しがより重要になってくるのではないか。要するにスタートからゴールまでの激しい攻防が見られるのではないか、という期待を今後に抱かせたことは間違いありません。

 少なくとも、1000m通過56秒9のラップが刻まれながら、「もう少し(速く)流れてくれていれば」というコメントは聞かれなくなるでしょう。速く流れているのですから。それとも、1000m56秒9が速くない、という概念に変化していくのでしょうか。

 いや仮にそうだとしても、それはやっぱり“競馬が変わった”ということになりはしませんか?

 いずれにしても、競馬の“次の時代”をちょっぴり予感させた第10回ヴィクトリアマイル。そんなふうに記憶しておきたいと思います。勿論、度肝を抜かれた配当額とともに。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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