甦る攻防、面白くないレースからの脱却――改良馬場が競馬を変えるか!?
大種牡馬の影響力
大種牡馬サンデーサイレンスが「スローペース症候群」を生んだ要因という仮説もある 【写真は共同】
この大種牡馬の産駒の、その多くに見られる顕著な特徴として、「折り合いをつければ“必ず”と言っていいほど最後の最後に爆発的な瞬発力を発揮する」ということが挙げられます。無論、他の種牡馬の産駒でも折り合えれば終い切れまくる馬がいないわけではないですが、サンデー産駒の場合、個体のレベルを超越して目立っていました。
その印象が強ければ強いほど、そしてサンデーサイレンスの偉大さが増せば増すほど、“タメて折り合うことで終いに脚を残せる思想”の蔓延につながり、それこそが「スローペース症候群」を生んだ大きな要因ではないか、という仮説です。
勿論、異論はあるでしょう。長い直線を有する競馬場が増えたことも、この現象に拍車をかけていそうですし、まだ他にもいくつか要因がないとは言えないはず。
ただ、サンデーサイレンス産駒が競馬界を席巻し始めた時期と、“スローペース症候群”の言葉が生まれた時期とがリンクするように感じられるのは、単なる気のせいでしょうか?
スローペース症候群、その弊害
そういうレースが頻出する中、近年、レース後の関係者のコメントで「もう少し流れてくれていれば」といったような類のモノが増えました。
これは、自らレースの流れに対応しようとし、その結果として「展開が向かなかった」のとは似て非なるもの。
ひとつのレースにおいて、全くの他者任せと、何とかしようという姿勢は、観ている者に必ず伝わり、そして前者は、往々にして「攻防の喪失」を感じさせます。それは先に書いた、単なる「面白くない」では済まされない事態を生み出す可能性すらあります。
スローペース症候群の弊害は他にもいろいろ考えられますが、その最たるものがここにあるのではないか、と思うのです。