「西高東低」の逆転はなぜ起きた――今年のクラシック戦線は異状あり!?
強い牝馬の系譜
桜花賞を狙う有力候補はいずれも関東馬……今年のクラシック戦線は異状あり!?(写真はココロノアイ(左)が勝ったチューリップ賞) 【写真は共同】
その本番直前。今年の3歳戦全体を見渡そうと試みた時、ふたつの“時代”にちなんだキーワードが交錯していることに気づかされます。
ひとつ目は“強い牝馬の時代”。これが継承されるかどうか、です。その“時代”は07年にスタートしました。
その年、牝馬として64年ぶりにダービーを制する快挙を成し遂げたのがウオッカです。この馬が08、09年と2年連続で年度代表馬に選出され、しかも同期の牝馬ダイワスカーレットは07年の有馬記念で2着し、翌年には優勝。まさに牡馬は「顔色なし」といったところだったわけですが、2世代下に登場したのがブエナビスタで、そこから更に3世代下にジェンティルドンナが現れました。
ブエナビスタは10年、ジェンティルドンナは12年に年度代表馬に輝き、しかもジェンティルドンナにいたっては、昨年14年も代表馬に選出されました。2度選出されるだけでも歴史的名馬の評価がふさわしいのですが、隔年で受賞したというのはこの馬が初めて。それだけ活躍期間が長かったことの証であり、“強い牝馬の時代”を象徴するトピックだったと言えるでしょう。
さて、それらを踏まえたうえで今年のクラシック。こちらに目を戻すと、まさに“強い牝馬の時代”の系譜を継ぐのではないか、という期待を抱かせる牝馬が現れました。
その代表的な馬がルージュバック(父マンハッタンカフェ、母ジンジャーパンチ・大竹厩舎)です。
良血牡馬を子供扱い
この時に破った相手が皐月賞トライアルの若葉S4着、2勝目に破った相手は京成杯を勝ってスプリングS4着ですから、ルージュバックが皐月賞に駒を進めても、という声が出るのも無理はありません。
まあとりあえず牡馬のクラシックには登録がなく、今のところ追加登録の噂も聞きませんので、牝馬戦線はこの馬が中心に争われることは間違いありません。
ところが、その牝馬戦線でルージュバックを取り巻くライバル達と言うのが、これがまた近年稀に見る才媛揃い。まさに「百花繚乱」と呼ぶにふさわしい様相を呈しているのですが、ここにふたつ目のキーワードが出てきます。
“西高東低時代”の逆転現象です。
強い牝馬の共通点
この重賞勝ち馬3頭。ルージュバックにとっての当面のライバルになりますが、ルージュバックを含めた4頭に共通するのが、美浦所属馬……つまり関東馬である、ということです。
そもそも、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズを制して2歳女王の座についたショウナンアデラ(父ディープインパクト、母オールウェイズウィリング・二ノ宮厩舎)も美浦所属馬。この馬の骨折による戦線離脱は残念でなりませんが、ともかく、比較するのが悩ましい才媛達が、揃いも揃って美浦に現れたことに、近年にない空気が感じられるのが今年のクラシックの特徴なのです。