四大陸選手権Vのりくりゅう「このメダルは、5年間の成長の証」 2020年大会と同会場で手にした栄冠

沢田聡子

「成長していくスタート」となる優勝

今季はいい練習を積めているというりくりゅう(写真中央) 【写真は共同】

 ショートに続き、フリーでも最後にリンクに登場した2人は、引き締まった表情でスタート位置についた。木原は黒、三浦は赤の新しい衣装は、木原の胸についた花と三浦のドレスの色がリンクしており、鮮やかな印象を与える。

 冒頭のトリプルツイストは高さがあり、1.55の出来栄え点がつく。続く3連続のソロジャンプでは、2番目に予定していたダブルアクセルで三浦のジャンプがシングルになってしまったものの、流れは美しかった。スロージャンプは2つとも着氷が完璧ではなかったが、堪えて転倒には至らず。2人の強みである、木原が三浦を高く持ち上げる2つのリフトは迫力があり、いずれも2点を超える加点を得た。ラストでポーズの向きを間違えたコレオシークエンスにも、アイスダンスのような華やかな所作による表現が評価されたのか、2.00の出来栄え点がついている。

 フリーはシーズンベストスコアとなる142.59、合計は217.32。ショート・フリー、総合のすべてで1位となり、完全優勝を果たした。

 チャンピオンとなった2人は、韓国の伝統建築をテーマにしたキスアンドクライでインタビューを受けた。

「私たちの初めての四大陸が、この韓国の会場で行われたんですけど、今年同じ会場で滑れることができて、本当に感慨深いなと思っています」

 三浦がこう言うと、木原も5年前に思いを馳せた。

「5年前は、今の自分たちというのはまったく想像できなかったんですけれども、今日こうして優勝することができてすごく嬉しく思いましたし、最後のポーズの方向を間違えなければ完璧だったかなと思います」

 この木原のコメントを聞いて笑っていた三浦は「ソウル観光します!」と宣言し、「カムサハムニダ(ありがとうございます)」と韓国語で挨拶してインタビューを締め括った。

 記者会見で、木原はフリーの演技を振り返った。

「ベストな滑りではなかったんですけれども、シーズンベストをしっかり更新できた。細かいミスは出てしまいましたが、今シーズン初めて140点台に乗せることができたので、そこはすごく良かったかなと思います」

 そう収穫を挙げながらも、再びラストポーズのミスに言及した。

「エンディングポーズの向きを間違えてしまったので、そこは非常に反省かなと思いました」

 ジャッジに向かって最後のポーズをとれなかったのはりくりゅうらしいご愛敬だったが、この大会ではあらためて2人の強さを示した印象がある。木原にも確かな手応えがあるようで、「このメダルは、僕たちの5年間の成長の証かなと」と語った。

「そしてまた5年、成長していくスタートなのかなと思います」

 三浦は、「まずは世界選手権(3月、アメリカ・ボストン)に向けて、今大会の疲れをとって、それからいつも通りの練習に励んでいきたい」と前を向いた。

「今シーズン、いい練習を積んできているので、それを世界選手権前も同じように積んでいきたいと思います」

 ソウルで価値ある金メダルを手にしたりくりゅうは、開幕まで約1カ月となった世界選手権に向け、再び本拠地のカナダで演技を磨く日々を送る。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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