NHK杯2位も…りくりゅうが新しい好敵手を歓迎 結成以来初のミスにも冷静に対処、GPファイナルへ

沢田聡子

今季ショート『黒くぬれ』で、鋭い表現をみせる“りくりゅう” 【写真:ロイター/アフロ】

ミスをひきずらず、ショート首位発進

 三浦璃来/木原龍一にとって今年のNHK杯(11月8~9日、国立代々木競技場第一体育館)は、2023年4月の世界国別対抗戦以来となる日本での試合だった。三浦/木原は、カナダ・オークヴィルのリンクで一緒に練習することもある長岡柚奈/森口澄士とともに、前日練習に臨んだ。

「カナダでも一緒に練習させていただいていたので、ホームみたいだなと思っていました」(三浦)
「違和感なく。オークヴィルかなと思いながら」(木原)

 三浦/木原は、木原の腰椎分離症により、昨季はグランプリ(以下GP)シリーズ欠場を余儀なくされた。今季GPシリーズに戻ってきた三浦/木原は、初戦のスケートアメリカで優勝、好スタートを切った。

 GP2戦目となるNHK杯の前日練習後、今大会にはファイナル進出がかかることについて問われた木原は、「もちろん、ファイナルがかかっているかもしれないのですが」と答え、言葉を継いだ。
「しっかり自分たちのやることをやって、先を見すぎず、まずは目の前にあることをこなすというふうにしていきたい」(木原)

 また、三浦は期待を口にした。
「久しぶりの母国での試合なので、純粋に楽しみたいなと思っています」(三浦)

 翌8日のショートプログラム、黒い衣装をまとった三浦/木原は、最終滑走で登場。客席で掲げられた「りくりゅうタオル」に力をもらい、『黒くぬれ』(シェイ=リーン・ボーン振付)を滑り始める。冒頭で大技のトリプルツイストを決めるが、続くサイドバイサイドのソロジャンプ・3回転トウループで、三浦が回転の途中に体が開くミスをしてしまう。しかしその後は大きなミスなく滑り切り、持ち前のスピード感あふれるスケーティングでクールな曲を表現した。

 演技を終えた木原は、三浦に「ダブル(2回転)したの?」と聞いたという。

「回転が見えなくて、分からなかったので。ダブルかなと思ったので、その瞬間聞きました」(木原)

 ミスがあったにもかかわらず、三浦/木原は71.90というスコアで首位発進した。

「ミスがあったのですが、そこからのリカバリーをきちんとすることができたので、その点は本当に良かったかなと思います」(三浦)

 そう三浦が前を向くと、木原も同調した。

「もちろん、ベストな演技をしたかったです。今日はそういった演技をすることはできなかったのですが、その後しっかりミスをひきずることなくまとめ切れたのは、(怪我から)復帰して成長してきた点かなと思います」
「練習から、『ミスが出てもしっかりやる』ということをやってきたので。もちろん毎回完璧な演技ができればいいのですが、今日みたいにミスが出る時は必ずあるので。ミスをしても必ず戻るという練習を常にやってきたので、それが出せたかなと思います」(木原)

 合計点は気にせず、スケートアメリカでマークしたフリーの点数を超える。三浦/木原はそう目標を設定し、フリーに臨んだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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