島田麻央「辛抱すれば春が来る」、中田璃士「4回転2本を」 インターハイを制した2人が世界ジュニアへ

沢田聡子

お正月は箱根駅伝を見に行ったという島田麻央 【撮影:沢田聡子】

高い得点での優勝に手応えを得た島田

 全日本選手権で2位になったジュニアのエース・島田麻央と中田璃士が、1月20~22日に行われたインターハイ(高校選手権/KOSÉ新横浜スケートセンター)を制した。2人は共に、中京大中京CAN(通信制)の1年生。また全日本ジュニア選手権チャンピオンでもあり、2月末から始まる世界ジュニア選手権(ハンガリー・デブレツェン)に出場予定だ。

 島田はショートでほぼ完璧な演技をみせ、71.82というスコアで首位に立った。ミックスゾーンでは「新年一発目の試合で大きなミスなく終われたことが、すごく良かった」としながら、反省点も挙げた。

「もっと点数を伸ばすためには、大きく演技をしたり、ジャンプを大きくしたりして加点をもらえるようにしていかないといけない」

「(3回転)ルッツ-(3回転)トウ(ループ)が、試合ではあまり失敗しないんですけど、まだしっかり考えて集中しないと跳べないジャンプなので。集中をしなくてもいつでも跳べるようなジャンプにして、その分(大技のトリプル)アクセルや4回転に集中できたらいいなと思います」

 全日本選手権からは、スケーティングやジャンプフォームの修正に取り組んできたという。一方、「今回のお正月は人生で一番休んだ」と振り返ったが、その過ごし方を問われた際の答えにも、ジュニアで勝ち続けるメンタルの保ち方がにじみ出た。初詣には行ったが、おみくじは引かなかったという。

「凶とか出たら、ちょっと気持ちが下がってしまうので、知らないことにしておこうと。小さいころは引いていたんですけど、勝ちたいと思い始めてからは引かないようにしています」

 翌日のフリーでは、トリプルアクセルと4回転トウループに挑んだ。冒頭のトリプルアクセルは、2.40という高い加点を得て成功。続いで挑んだ4回転トウループでは転倒したものの、直後の3回転ルッツ-3回転トウループはきっちりと決めた。その後のエレメンツはすべて加点がつく出来栄えで、最後の高速スピンでは観客席から拍手が起きた。

 フリー143.16、合計214.98という高い得点に、島田自身も手応えを感じていた。

「今シーズン国内大会のジュニアの試合では130を超えたことがなかったので、得点を聞いた瞬間はすごく嬉しかったです」

 一方、転倒した4回転トウループについては、6分間練習では失敗してはいたもののいい感触だったという。

「そのままいこうと思ったんですけど、やっぱり本番になると、狙いすぎてしまって普段の跳び方ではなくなってしまうことが最近多くて。それで『同じような失敗をしてしまったな』という感じです」

 世界選手権ではもちろん4回転トウループを「決めたい」と考えているが、もし失敗するとしても同じ失敗はしたくないとも語った。「4回転の後から、自分の演技だと思って滑りたい」と言う。

「もし(トリプルアクセルと4回転を)2本失敗しても他をミスしない演技をすれば、ある程度点数が出ていたり、大技を降りても他のジャンプを失敗してしまったら思った以上に点数が伸びなかったりもするので。『大技だけじゃないんだな』というのは、この2、3年ですごく感じています」

自らと重ね合わせて滑る島田のフリー

ジュニアで勝ち続ける島田(左から2人目)が、初のインターハイも制した 【撮影:沢田聡子】

 フリーの曲『窓から見える』は、日本風の曲で演技してみたいという島田の希望もあって選ばれた。数々の俳句が歌詞に織り込まれる曲を最初に聴いた時は、「あまり歌詞の意味が分からなくて、すごく不思議な曲だな」という印象だったという。しかし歌詞の意味を調べ、曲を聴いて感じたことを大切にし、さらには表現の先生に教えてもらうことで、自らストーリーを創り上げていった。

「病院の窓から、景色を見るようなイメージで。外に出たいけど出られない、だけど絶対に辛抱すれば春が来る。そして辛抱すれば、病院から出て外でその景色が見られる、というふうに、苦しい時でもずっと努力して辛抱し続ければ、明るい未来が待っていると思う、って。自分と重ね合わせて、滑るようにしています」

 このフリーが深い印象を残すのは、島田自身が試行錯誤してたどり着いた表現だからだ。ジュニアの絶対女王として君臨する島田だが、その背景には彼女にしか分からない苦しさもあるのだろう。

「今シーズン最後には、しっかり何を表現したいか伝わるような演技ができたらいいなと思います」

 ジュニアの大会で勝ち続けるメンタルの保ち方を質問されると、島田は「勝ちたいと思わず、もし負けるなら、負ける時は絶対にやる前から決まっていると思って」臨んでいると答えた。

「あまり勝ちにはこだわらずに、毎回毎回思い切って。その瞬間はもう今しかないので、その一瞬一瞬を楽しんで滑ろうと思っています」

 そんな島田にとり、アットホームな雰囲気のインターハイは楽しい大会となったようだ。

「全国の高校生が集まった大会で、そして高校の代表として出るので。すごく勝ちたいという思いもありましたし、『楽しいな』という思いもありました」

 世界ジュニア選手権には「4回転は同じようなミスをしているので、そこをもっと修正して」臨みたいという。

「本番で同じ失敗をしないようにどうしたらいいか、というのをもうちょっと考えて。そして、もっと他のジャンプも精度を上げていけたらなと思います」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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