【単独インタビュー】ジュニアGPファイナル王者・中田璃士 本番に強い15歳、目指すは2030年五輪

沢田聡子

楽しんでいるという練習と同様、インタビューでも朗らかに語る中田 【スポーツナビ】

 ジュニアの男子シングルで今季飛躍を遂げたのが、15歳の中田璃士だ。全日本ノービス選手権3連覇の実績を持つ中田は、2023年ジュニアグランプリ(GP)ファイナルで金メダル、2024年世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得。シニアの年齢に達する2026-27シーズンまで残り2シーズン、ジュニアの世界トップで戦い続けることが期待される中田に、話を聞いた。(取材日:2024年6月24日)

伸び伸び楽しい環境が自分にとって一番

――2023-24シーズンはジュニアGPファイナルで優勝、世界ジュニア選手権で銀メダルと、最高の結果を残しました。好成績を出せた理由は?

 友達と楽しくスケートをやっていて、先生からは厳しいことをあまり言われませんでした。伸び伸び楽しく、あまり厳しくない環境が自分にとって一番なので、だからこそこういう結果を出せたのではないかなと思います。

――お父様(中田誠人コーチ)と中庭健介コーチの指導を受けていますね。

 やっぱりパパからはたまに厳しい言葉、「何々しないと駄目だよ」みたいなことは言われますけど、中庭先生からは「ふざけるのはいいけど、ちゃんと練習してからふざけなさい」と言われます。

 中庭先生は、ジャンプの跳び方や締め方を変えたり、難しい入り方で跳んでみたりさせてくれます。そうやって練習を飽きさせないのが中庭先生の目標だと思うし、それが僕に合っているのかなと思いました。

――周りの仲間と、楽しく練習できている環境が良かったのですね。

 そうですね、あと一緒に世界ジュニアに行った中村俊介くん(4位)とは、試合前から「負けないぞ」という感じだったので。すごくいいライバルがいて、よかったと思います。

チャレンジの大切さに気づいたジュニアGPファイナル

ジュニアGPファイナルでは、フリーで会心の演技をみせて逆転優勝を飾った 【Photo by Lintao Zhang - International Skating Union via Getty Images】

――今季は、ショートプログラムでの出遅れをフリースケーティングで巻き返すことが多かったですね。

 そうですね、今季はルッツが課題だったので(ジュニアのショートで跳ぶ単独ジャンプの種類については、シーズンごとに課題が決まっている)。ルッツがあまり得意ではないので、ショートで出遅れることは多かったです。

――優勝したジュニアGPファイナルでも、ショートプログラムは4位発進でした。フリーには、開き直って臨めたのでしょうか。

 フリーはノーミスで演技できたので、優勝はそのおかげです。でもあのノーミスは、思っていた演技ではなかったんですよ。ファイナルにいった時は優勝する気でいたのですが、ショートが終わった時点で「まずはメダルをとりにいこう」という気持ちに変わって。

 でもフリーの演技前、トレーナーさんに「今の年頃は、チャレンジした方がいい」と言われたんです。それでフリー本番では、練習でやったことがない(トリプル)アクセル2本を跳んで決めました。チャレンジすることが、すごく大事だなと思いました。練習でも、あんないい演技はしたことがないです。

――本番は強い方ですか?

 そうですね、本番になると「絶対やってやるぞ」みたいな気持ちが湧いてきて、普通じゃあり得ないことをやりたいので(笑)。

――競技会で緊張はしますか?

 リンクに行くまでは緊張しますけど、会場に着いたら「やらないといけない」というのがあって、そんなに緊張はしないです。「ジャンプを7本跳ぶだけだし、大丈夫かな」みたいな。それから、試合に行くまでは、名言を聞いたりしています。勇気が出るので、ユースオリンピックが終わった後も、名言の動画をたくさん見ました。

――演技中は、どのようなことを考えているのでしょうか。

 ジャンプの1本目は、「絶対に大丈夫、できる」と言い聞かせて。途中からは、もう頭が真っ白です。すぐ次から次へとジャンプがくるので、考える暇があんまりなくて。でもやっぱり、ショートの最後のジャンプはけっこう考えますね。今季は特にルッツが最後だったので、「失敗できないぞ」と思っていました。

――ジャンプについて考えながらも、音楽を表現する必要がありますね。

 音に合わせて動きをするのが好きで、本番は特に力強く演じるようにしています。以前は音を聞かないでただ振付をやっていくような感じもあったのですが、今はしっかりと聞いている気がします。全部の試合ではできていないかもしれませんが、今季の初戦あたりから、以前と比べてできるようになってきたと思います。今シーズンは手の使い方を一番意識していて、曲調に合わせて滑らかに滑ることにも気をつけました。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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