バドミントン日本代表、新体制で大堀HCが掲げた「五輪メダル3個」は苦難の道
五輪で2連続銅メダルの渡辺勇大が選出外の背景は?
24年9月の全日本社会人選手権、プロである渡辺のユニフォームには、個人契約スポンサーロゴが掲示された 【平野貴也】
昨夏のパリ五輪後、ペアを組み替えて世界ランクが下がっている(1月21日更新時点で116位)渡辺勇大が代表に入らなかった背景に、この状況が影響している可能性が強い。混合ダブルスは、当初5組を選出予定だったが、朝倉康善強化本部長は「選考して内定した選手がいたけれど、その後、辞退という話で3組になった」と説明した。
1組は、全日本総合選手権優勝で代表に内定した柴田一樹/篠谷菜留(NTT東日本)が、篠谷が引退予定で辞退したもの。関係者の話によれば、もう1組は、渡辺/田口真彩(ACT SAIKYO)のようだ。
渡辺は、BIPROGYのチームに所属するが、プロ選手として活動。個人契約のスポンサーもついている。どのみち自費派遣ならば、日本代表の制約に縛られず、スポンサー広告を露出するプロ活動を行いやすい環境を選んだ可能性がある。
渡辺/田口は、24年12月の全日本総合選手権後にペア継続について話し合うとしたが、25年1月の国際大会も参加中。ペアを継続して世界ランクが上がれば、日本代表追加の可能性は、ありそうだ。
重点課題となる次世代育成の方策は不透明
男子シングルスの奈良岡功大(NTT東日本、23歳、世界ランク9位)、女子シングルスの宮崎友花(柳井商工高校→ACT SAIKYO内定、18歳、世界ランク7位)とTCP対象の若手もいるが、まだ世界ランクの低い若手代表選手は自費派遣。朝倉強化部長は、予算に目途がつけば、若手の代表派遣方針を考えたいと話したが、現状ではかじ取りができていない。所属先次第の状況だ。
25年から世代を通した「一貫強化」を強調している点も、朝倉強化部長は、ジュニア世代の強化合宿に日本代表や社会人選手を招へいして技術指導を行ったり、刺激を与えたりしたいと話したが、これも計画段階。例えば、ダブルスでは「サービス周り」と呼ばれる1~4球目の攻防での主導権掌握が重要になっているが、現代表が世界と戦って見えた課題と解決法を強化部として提示し、次世代の育成方針に採り入れるなどの方策が必要だろう。
協会のみでは強化は不十分、大堀HC体制に求められる「連係力」
元々、HCとして種目担当コーチや協会執行部との連係役を担う立ち位置だが、協会だけでは、日本全体の強化がままならない財政状況だ。大堀HCは、就任のあいさつで「人間力を高めること、個々の選手を伸ばすこと、所属先との連携を密にすること」を3つのバリューに挙げたが、連係力こそ新体制の肝となる。
前任の朴HCは、弱小国にやって来た五輪金メダリストのカリスマ。日本全体が引っ張ってもらう意識が強い中で代表強化が行われた。しかし、新体制では勝手が違う。世界での戦いを知った選手や所属先にそれぞれの思惑がある中、協会や代表チームが活動への理解だけでなく、財政面の協力も仰がなければならない環境だ。
日本代表の運営と強化は、より多くの分野との連係による、総力戦を強いられる。五輪で過去最多3個のメダル獲得の目標を達成するには、大堀HC体制の連係力こそ最大の課題となる。
日本代表選手(2025年)
<男子シングルス>
小川翔悟(ジェイテクト)23歳、世界ランク60位
沖本優大(BIPROGY)19歳、世界ランク195位
高橋洸士(トナミ運輸)23歳、世界ランク43位
武井凛生(NTT東日本)21歳、世界ランク279位
田中湧士(NTT東日本)25歳、世界ランク25位
奈良岡功大(NTT東日本)23歳、世界ランク9位 ※TCP
西本拳太(ジェイテクト)30歳、世界ランク15位 ※TCP
渡邉航貴(BIPROGY)25歳、世界ランク13位 ※TCP
<女子シングルス>
明地陽菜(再春館製薬所)19歳、世界ランク44位
奥原希望(東京都協会)29歳、世界ランク23位 ※TCP
郡司莉子(再春館製薬所)22歳、世界ランク40位
杉山薫(BIPROGY)21歳、世界ランク39位
高橋明日香(ヨネックス)25歳、世界ランク55位
仁平菜月(ヨネックス)26歳、世界ランク19位
宮崎友花(柳井商工高校→ACT SAIKYO内定)18歳、世界ランク7位 ※TCP
山口茜(再春館製薬所)27歳、世界ランク3位 ※TCP
<男子ダブルス>
相澤桃李/佐野大輔(ジェイテクト)25歳/24歳、世界ランク79位
岡村洋輝/三橋健也(BIPROGY)26歳/27歳、世界ランク18位
熊谷翔/西大輝(BIPROGY/龍谷大学→BIPROGY内定)23歳/21歳、世界ランク110位
霜上雄一/野村拓海(日立情報通信エンジニアリング)26歳/27歳、世界ランク59位
保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)29歳/29歳、世界ランク11位 ※TCP
山下恭平/緑川大輝(NTT東日本)26歳/24歳、世界ランク132位
<女子ダブルス>
五十嵐有紗/櫻本絢子(BIPROGY/ヨネックス)28歳/29歳、世界ランク81位
大竹望月/高橋美優(BIPROGY)22歳/22歳、世界ランク62位
志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)27歳/26歳、世界ランク3位 ※TCP
中西貴映/岩永鈴(BIPROGY)29歳/25歳、世界ランク5位 ※TCP
福島由紀/松本麻佑(岐阜Bluvic/ほねごり)31歳/29歳、世界ランク36位
<混合ダブルス>
霜上雄一/保原彩夏(日立情報通信エンジニアリング/ヨネックス)26歳/26歳、世界ランク47位
西大輝/佐藤灯(龍谷大学→BIPROGY内定/ACT SAIKYO)21歳/23歳、世界ランク59位
緑川大輝/齋藤夏(NTT東日本/ACT SAIKYO)24歳/24歳、世界ランク12位