フェルスタッペンの4連覇は、どれほどの偉業なのか
歴代チャンピオンたちとの違い
ドイツを代表する二人のF1世界チャンピオン、セバスチアン・ベッテル(左)とミハエル・シューマッハの珍しい2ショット 【(c) Redbull】
一方でシューマッハ以降の4人は、いずれも間近で見てきた。シューマッハの最大の功績は、「F1の世界にプロフェッショナリズムを持ち込んだ最初のドライバー」だったことだと思う。1980年代までのF1はろくにトレーニングもせず、セナやプロストでもそのあたりの意識は決して高くなかった。タバコを吸うドライバーすらいたほどだ。
そこに登場したシューマッハはサーキットに自分専用のトレーニングジムを持ち込み、「サイボーグ」と称される強靭な肉体を作り上げた。そしてチーム内では徹底的なナンバー1体制を敷き、常勝街道を突っ走った。その後のF1ドライバーたちは程度の差こそあれ、シューマッハのそんな高いプロ意識の影響を受けていると感じる。その意味でも偉大なチャンピオンであった。
フェルスタッペンは史上最高のチャンピオンか?
今季終盤の勢力図を見る限り、来季のレッドブルとフェルスタッペンはいっそうの苦戦を強いられそうだ 【(c) Redbull】
彼ら3人に比べると、セバスチアン・ベッテルの評価は決して高くない。「セバスチアンの4連覇は、当時のレッドブルがあまりに強く、ライバル不在だったから」というアロンソ評が、その代表的なところか。ポールポジションから逃げ切って勝つパターンが多く、逆に2、3列目グリッド以下からのレースで勝利したことがほとんどないのも低評価の一因だ。
一方フェルスタッペンは、卓抜したマシンコントロール、勝利への執着、高いプロ意識は、以前から定評があった。とはいえ去年までは、「強いレッドブルで勝つのは当然」と見られていたのも事実だ。それが今季、冒頭でも述べたように、マシンの不利を跳ね返してタイトルをもぎ取ったことで、「F1史に残る偉大なチャンピオン」という評価が固まったのではないか。
ただし今季終盤の勢力図を見る限り、来季のフェルスタッペンは今年以上の苦戦を強いられそうで、シューマッハに並ぶ5連覇達成は難しそうに思われる。だがもしそうなったとしても、フェルスタッペンの評価が落ちることはないはずだ。
車体、パワーユニットの技術規約が大きく変わる2026年以降は、どのチームが覇権を握るのか全く予想がつかない。そんなF1戦国時代でも輝きを見せたとき、フェルスタッペンは「史上最高のチャンピオン」と呼ばれることだろう。
(了)