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三笘と遠藤がプレミアで初対峙 指揮官の修正力がリバプールに逆転勝利をもたらす

森昌利

三笘は後半42分までプレー。後半32分に投入された遠藤とも、短時間だがプレミアのピッチで初めて対峙した 【Photo by Mike Hewitt/Getty Images】

 11月2日(現地時間、以下同)、リバプールの本拠地アンフィールドで三笘薫と遠藤航が相まみえた。2人が一緒にピッチに立っていたのは10分間だったが、プレミアリーグを長く取材している筆者にとっては「特別な10分間」だった。「自分たちのプレーへの反省が大きい」と三笘が悔しがったこの試合。リバプールが逆転勝ちを収めたのは、アルネ・スロット監督の修正力と的確な用兵が大きな要因だ。後半32分に送り込まれ、今季リーグ戦では最も長い時間プレーした遠藤も、起用に応えるパフォーマンスで勝利に貢献した。

前半の両軍の差を明確に示す2つのデータ

「そうですね。1点取られて、雰囲気が変わって(相手を)乗せてしまったんで。1点目がカギだったかなと思います。後半、相手がより前に来たということで、それでもうまくボールをつなげていたとは思いますが、そこで一個つぶされた時に、相手が前に来て、つなげなくなった」

 当然のことながら、勝利の後のほうが取材はやりやすい。けれども三笘薫は、前半に自分が起点となって1点を先取したにもかかわらず、後半、立て続けに2点を奪われて逆転負けを喫した悔しい試合の後でもしっかりと話してくれた。

 そして冒頭のコメント通り、その言葉にはピッチに立っていた者だけが語れる臨場感に溢れていた。

 前半を見た限りでは、この試合は9月14日に行われたノッティンガム・フォレスト戦の再現になるかもしれないと思った。9月の代表ウイーク直後の第4節、リバプールが今季唯一の負けをホームで記録した(0-1)試合だ。

 それどころか、この試合の2点目もブライトンが奪う公算が高いと思った。

 ここで前半の両軍の差を明確にしてくれるデータを紹介したい。

 リバプール58&1,323、ブライトン61&1,411。

 リバプール58対ブライトン61という数字は、前半のスプリント数。そして1,323対1,411という数字は、時速25キロ以上のインテンシブ・ランの回数だ。

 この差が前半の0-1というスコアに表れた。

 ブライトンの先制点は試合序盤の前半14分だった。三笘の左サイドからのパスを中央にいたダニー・ウェルベックが微かなタッチで無人の地だった逆サイドに流すと、25歳トルコ代表DFのフェルディ・カドゥオールがそこに走り込み、右足を強振した。このシュートが対角線上の左ポストの内側を直撃してゴール。素晴らしいフィニッシュであったが、それ以前に運動量でアウェーチームが上回り、試合を優勢に進めたことでこの先制点が生まれたのだ。

途中出場の2人がリバプールに流れを引き寄せた

途中出場のジョーンズが、同時投入されたディアスとともにリバプールの起爆剤に。後半27分にはグラウンダーの丁寧なパスでサラーの逆転弾をアシスト 【Photo by Jan Kruger/Getty Images】

 ところが前半全くピリッとしなかったリバプールが、後半に入ると急にギアを上げた。チーム全体が躍動し、ブライトンにのしかかった。そしてアルネ・スロット監督が後半21分の段階でアレクシス・マック・アリスターに代えてカーティス・ジョーンズ、ドミニク・ソボスライに代えてルイス・ディアスをピッチに送り出すと、三笘が話したようにリバプールはより前に出た。

 途中出場の2人がゲームを変えたと言っていいだろう。ジョーンズとディアスが猛然と、一歩も二歩も深く踏み込み、ボールを追い回した。2人のサブがそうすることで、他選手がさらにギアを上げた。つまり、スロット監督の意思をジョーンズとディアスの2人がピッチ上で明確に示し、強豪チームがホームでフルスロットルとなって向かっていったのである。

 こうして、それまでアンフィールドで互角以上の戦いを見せていたブライトンの余裕を奪い去った。

 ジョーンズとディアスがピッチに登場した瞬間から全力で走りまくり、その勢いが伝染したかのように運動量を急上昇させたリバプール・イレブンの押し上げが始まると、その激しさに呼応するように、アンフィールドの熱いサポーターが一気に加熱した。

 同点弾はこの2人の投入からわずか4分後に生まれた。コーディー・ガクポのラッキーなゴールだった。そして立て続けに、エースのモハメド・サラーがその実績と実力を誇示するかのような美しい逆転弾を決めた。

 逆転弾はカウンターが起点だった。サラーは右サイドでジョーンズからパスを受けると、小さなフェイントだったが縦抜けしようと見せかけて、対峙するブライトン左サイドバックのペルビス・エストゥピニャンをかわして中央に切れ込み、シュートコースを作り出して魔法の左足を一閃。対角線上のブライトン・ゴール左のトップコーナーに、超一流フットボーラーならではのシュートを叩き込んだ。

 三笘もこのサラーのゴールに関しては「ワンチャンスで決め切るところは見習わなければならない」と話して、敬意を表すしかなかった。

 週中にブライトン・ホームで行われたリーグ杯4回戦で2ゴールを奪ってヒーローとなったガクポが試合後、「クロスだった」と認めたラッキーな同点弾からわずか2分後の逆転弾だった。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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