充足のコンサドーレ、反攻のフォルティウス 北海道カーリングツアー第2戦アドヴィックスカップ総括

竹田聡一郎

MVP「スポーツナビ賞」には男子は佐藤剣仁、女子はミラクルショットを決め続けた中部電力の中嶋星奈がそれぞれ初選出された。賞金10万円が贈られ、佐藤は「大好きなフォーがたくさん食べられる」と笑顔 【(C)HCT2024】

 カーリングの北海道ツアー2024は2戦目のアドヴィックスカップ(北見市常呂町/アドヴィックス常呂カーリングホール)を終えた。

 北海道ツアーは例年なら8月上旬に“どうクラ”ことどうぎんカーリングクラシックでシーズン開幕が告げられるが、今季は会場のどうぎんカーリングスタジアムが補修のため休館中。8月上旬に行われた稚内みどりチャレンジカップ、このアドヴィックスカップ、そして今週末にかけて開催される、女子のみの大会アルゴグラフィックスカップの3大会となっている。

新加入の佐藤剣仁が大会MVP受賞

 アドヴィックス杯、男子の部はコンサドーレが稚内に続いて北海道ツアー2連勝、アドヴィックス杯に関しては昨年に続いて連覇となった。

 ラウンドロビンでロコ・ドラーゴ(Maeda)を7-4、プレーオフでTM軽井沢(Morozumi)を6-2という実績のある2チームを退け、決勝は2月の日本選手権決勝以来のSC軽井沢クラブとの対戦となったが、これも8-3で大勝する。

 特に今季、新戦力として迎えた佐藤剣仁のパフォーマンスが光った。稚内みどりチャレンジ杯に続きリードを務め、ショット面、スイープ面でチャンスを演出。「もちろん僕もできる限りショットを決めたいけれど、決まらない時も後ろでフォローしてくれるので安心してプレーできている」と精神面の充実を語り、大会MVPにも選出された。

 男子は稚内と常呂の2大会で今季の北海道ツアーを打ち上げた。これから各チームは順次カナダ遠征に備え、早いチームは9月上旬には出国予定だ。

 特にコンサドーレは今季の日本代表として10月にカナダラクームで開幕するPCCC(パンコンチネンタルカーリング選手権)に出場する。2025年の世界選手権(カナダ・ムースジョー)、そしてその先の2026年ミラノコルティナダンペッツォ五輪につながる重要な大会だ。

「僕らが日本代表チームであるということを、(北海道ツアーの)2大会で見せることができた。いま進んでいるのは間違いなくいい方向。これを継続していきたい」とスキップの阿部晋也は胸を張る。一方で北海道ツアーを全勝優勝で締めても、浮かれた様子はない。阿部は3勝しかできずに11位に終わった4月の世界選手権(スイス・シャフハウゼン)の戦いにも触れた。

「世界選手権でできなかったことがたくさんあった。個人の課題もまだまだありますし、チームとしては成長過程。秋のカナダ遠征で海外のチームと対戦して完成度を高めたい」

スイーパーとして佐藤とコンビを組む大内遥斗との連携も試合ごとに高まっている 【(C)HCT2024】

フォルティウスが好調を維持

 女子の部は地元のロコ・ソラーレ(Fujisawa)や、日本選手権女王のSC軽井沢クラブ(Ueno)、さらに昨季グランドスラムで勝ち世界ランキングも3位(開幕時点)にジャンプアップしたTeam Gim(Gim)が参戦するなど、好チームが揃った。

 ロコ・ソラーレは吉田夕梨花を体調不良で欠き、鈴木夕湖ー吉田知那美ー藤澤五月の3選手で挑んだが、SC軽井沢クラブに競り勝つなどプールBを3連勝で突破。地力の高さを示した。

 プールAのTeam Gimも北海道銀行(Nihira)やフィロシーク青森(Nakamura)などの難敵をくだし3連勝。プールCからは稚内みどりチャレンジカップ準優勝のフォルティウスがやはり3連勝でクオリファイ(プレーオフ進出)を決めた。

 準決勝はロコ・ソラーレとフォルティウスの顔合わせとなったが、疲労が出始めたロコ・ソラーレに対してフォルティウスは堅実にショットを決めてゆく。特にスキップ吉村紗也香はチャンスを逃さずに序盤からキーショットを沈め、2エンドの複数得点、3エンドには3点スティールを呼び込んだ。終始優勢な盤面を保ちながら決勝に駒を進める。

 もうひとつの準決勝はTeam Gimに中部電力(Kitazawa)が挑んだ。連敗スタートとなりスキップの北澤育恵は「絶望的な状況だったけれど、調子が下がったところからどうやってチームとして上げていくか。それは少し見えてきた。まずは何が悪かったか。そこを改善しようという意識をチームで持つことができた」と語ったように首の皮一枚でプレーオフに滑り込み、SC軽井沢クラブ、Team Gimを立て続けに破り、ファイナルまで駆け上がった。

 稚内と同じカードとなったフォルティウス対中部電力の決勝だが、サードの中嶋星奈がフォルティウスを「ミスの少ないチーム。少しでもスキを与えると失点につながってしまう」と警戒したように、フォルティウスは1エンドからリード近江谷杏菜とセカンドの小野寺佳歩のセットアップでアドバンテージを作ると、サードの小谷優奈とスキップ吉村のバックエンドは完璧ではなくとも、1投ごとにきっちり最低限のタスクを果たすショットを繋げた。初回から3点でイニシアチブを握ると、以後も要所を締めてエンドを消化してゆく。中部電力も4エンドで北澤が魅せたダブルテイクアウトなどで一矢報いるが、反撃も単発に終わってしまった印象だ。継続性と再現性という意味ではフォルティウスが投げ勝った。6-5で決勝戦を制し、稚内のリベンジを果たした。

 吉村は自身とチームの課題として「勝ちたいところで勝ち切れない」を挙げていたことがあったが、この快勝でそれを少し払拭できたのかもしれない。
 
 北海道ツアーの最終戦、アルゴグラフィックスカップでは吉田夕梨花が復帰予定のロコ・ソラーレや、そのロコ・ソラーレや中部電力に惜敗したSC軽井沢クラブも捲土重来を期す。韓国からは2022年の女王Team Ha(Ha)も参戦し、さらなる激戦は必至だろう。29日から初戦が始まる。

左からリードの近江谷、セカンドの小野寺、サードの小谷、スキップの吉村。フィフスの小林未奈もリードとして出場し、安定したプレーを披露するなどチーム状態は良好だ 【(C)HCT2024】

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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