北海道銀行が国内とカナダでツアー連続優勝 日本勢好調の理由は北海道ツアーにアリ!?

竹田聡一郎

アルゴグラフィックスカップで北海道ツアー初優勝を果たした北海道銀行。左から中島未琴、伊藤彩未、山本冴、仁平美来、田畑百葉 【(C)北海道カーリングツアー】

 2024年の北海道ツアーが終わった。

第一戦:稚内みどりCHALLENGE CUP
 Kitazawa(中部電力) 5-4 Yoshimura(フォルティウス)
第二戦:アドヴィックスカップ
 Yoshimura(フォルティウス) 6-5 Kitazawa(中部電力)
第三戦:アルゴグラフィックスカップ
 Tabata(北海道銀行) 5-4 Fujisawa(Loco Solare)

 女子3大会、それぞれ決勝のカードとスコアだ。

 3大会すべてでクオリファイ(プレーオフ進出)を果たした中部電力は順調な強化を見せた。昨シーズンから加入した江並杏実のスイープを活かす意図がチームに浸透し、キーショットへの執着心が増した印象だ。世界ランキング3位のチームGim(Eun Ji Gim)との接戦をサードの中嶋星奈は「完璧に近いショットを重ねないと勝てない相手。投げ手とスイーパーの考えをしっかり一致させてからキーショットを投げた」と振り返ったが、世界ランカーやフォルティウス、ロコ・ソラーレといった国内の実績あるチームに競り勝ったのは今季を戦う好材料だろう。

中部電力もアドヴィックスカップで北海道ツアー初優勝。左から鈴木みのり、江並杏実、中嶋星奈、両角友佑コーチ、北澤育恵 【(C)北海道カーリングツアー】

 フォルティウスはなんといっても出産から復帰した吉村紗也香が存在感を見せた。「先攻の時は相手に1点取らせて、後攻でしっかり複数得点を取る。それは変わらない」と吉村が語るようにベーシックな戦術の中に精度を求めていく。2度のファイナルを踏みながら「コーナーへの攻め方を意識して試合をしていきたい」と具体的な課題が挙がるあたりチーム状況の良さがうかがえた。

吉村紗也香は復帰第一戦となった稚内みどりCHALLENGE CUPからキレのあるショットを放ち、大会MVP「スポーツナビ賞」を受賞した 【(C)北海道カーリングツアー】

 不動のリード吉田夕梨花が腎臓結石の手術を受けるなどトラブルに遭いながらもロコ・ソラーレは一定の成績を残した。3人で挑んだアドヴィックス杯は準決勝敗退ながらも「3人でプレーするからこそ伸び代をまた見つけることができた」と鈴木夕湖がポジティブに語れば、コーチボックスから見守った吉田夕も「次にアイスに立った時にこういう動きをしたら、という気づきや情報をたくさんもらえた」と収穫を口にした。万全ではないコンディションながらも、翌週のアルゴグラフィックスではファイナルに進むあたり地力は健在だ。

ロコ・ソラーレの藤澤五月は準優勝で終わったアルゴグラフィックスカップ後に「私のミスです」と悔しさを滲ませながらも「課題がたくさん出たのは収穫」と前向きに語った 【(C)北海道カーリングツアー】

 しかし、成長度という意味では、アルゴグラフィックスカップで上記の実績豊富な3チームすべてから勝ち星を挙げ、北海道ツアー優勝初優勝を果たした北海道銀行が抜けていた。今季の目標のひとつに「勝ち切ること」を掲げていたチームは、稚内や常呂ではアイスへのアジャストにやや苦しみながらもツアー3戦を通して尻上がりに調子を上げてきた。アルゴグラフィックスカップで仁平美来が「トップチームといい試合ができている」と誇ったように、チームGimやロコ・ソラーレといった世界トップチームにリードを許す試合があっても、「(劣勢でも)やれることはできた」と仁平。大きく崩れない粘り強さが備わってきた。

 さらに北海道ツアーを打ち上げてから中1日で札幌を経ちカナダ遠征をスタートさせると、アルバータ州で行われた「Saville Shootout」の決勝では2週連続ロコ・ソラーレと対戦し、再びラストエンドで逆転優勝を果たす。北海道ツアーに続いてカナダでのツアーでも初勝利を収める充実のシーズン序盤を過ごしている。

 ただ、それは北海道銀行だけに限ったことではない。「Saville Shootout」のベスト4は北海道銀行、ロコ・ソラーレ、中部電力が席巻した。オンタリオ州で行われた「STU SELLS OAKVILLE TANKERD」ではフォルティウスがイタリア代表チームから白星を奪いベスト8に進出。日本勢の好調が目立った。カナダのシーズンイン前に国内で真剣勝負を経てきた北海道ツアーの賜物と言えるだろう。

 続く今週はオンタリオ州の「AMJ CAMPBELL SHORTY JENKINS CLASSIC」でロコ・ソラーレとフォルティウスが対戦し、勝利したロコ・ソラーレがベスト4まで進出するなど日本勢の好調はまだ続く。日本選手権王者のSC軽井沢クラブ(Ueno)も渡加。これからがシーズン本番だ。それぞれ質の高い強化を積み、来年2月の日本選手権(横浜BUNTAI)に向かう。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント