MLBポストシーズンレポート2024

ファンを黙らせ、流れをつかんだ「大谷の球音」 2試合連続本塁打でWS進出へ王手【NLCS第4戦】

丹羽政善

「この俺と勝負するつもりなのか?」

6打数4安打4打点、1本塁打と大暴れのムーキー・ベッツ。大谷翔平が勝負を避けられても、ドジャースにはベッツがいる 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】

 その後の2打席、相手先発のホセ・キンタナは、かつてのチームメートである大谷との対戦を嫌っているように見えた。ホームランを打たれた後、10球中、ゾーン内の球は1球だけ。六回の4打席目はホセ・ブットとの対戦だったが、彼も大谷との対戦を避け、4球すべて、ゾーン内どころか、際どいコースでもなかった。これは結局のところ、メッツの足を引っ張った。大谷はいずれも生還したのである。

 大谷を敬遠して、露骨にベッツとの勝負を選択したわけではないが、大谷が歩いた後の打席で、ベッツはことごとくヒットを放ち、本人は認めないものの、強い気持ちが働いていたように映った。デイブ・ロバーツ監督が、その思いを代弁している。

「本当は、“この俺と勝負するつもりなのか?”と思っているのではないか。個人的には、イラッとしたはずだ」

 そんなベッツを大谷は塁上からどうみていていたのか? そう聞かれた大谷は、「ただただ、楽しい」と答えている。

「状態が良さそうですし、彼がヒットを打ったら、僕自身は一塁からでも二塁からでもホームに帰るつもり」

数字以上に安定していた山本由伸

NLCS第4戦に先発した山本由伸。4回1/3を投げて2失点と、その役割を果たしてリリーフ陣につないだ 【Photo by Drew Hallowell/MLB Photos via Getty Images】

 さて、先発マウンドを託された山本由伸も、4回1/3、被安打4、8奪三振、2失点という数字以上に安定していた。

 初回、2番のマーク・ビエントスに同点ソロ本塁打を許したが、二回までに5奪三振。三回は連打を許した後、併殺崩れの間に1点を与えてしまったが、安心して見ていられた。

 空振りは16。空振り率は40%で、スライダー、カーブ、スプリット、カッターの空振り率はいずれも50%だった。19人と対戦し、初球ストライクは14人。これまで、打たれるときは、カウントを悪くしてというケースが多かったが、どんどんストライクを先行させ、有利なカウントで勝負していた。

 唯一、危なかったのは三回。一旦は、併殺により、無失点で切り抜けたかと思われた。しかし、リプレイ検証の結果、一塁の判定がセーフに変わった。

 一度、切った集中力。再びスイッチを入れなければいけない。その時点ではまだ4対2。一、三塁に走者がいて、次のスターリン・マルテにタイムリーを許せば、流れを失いかねない。

 山本自身も、「流れをすごく左右する場面だったと思う」と話したが、「とにかく落ち着いて次の打者を抑えよう」と言い聞かせ、気持ちを切り替えた。

 結果はショートゴロ。オフェンスの流れを呼び込んだのが初回の大谷のホームランなら、投手では、山本があそこで追加点を与えなかったことで、その後の0封を呼び込んだ。

LCSのMVPは誰に?

 これで3勝1敗。ワールドシリーズ出場に王手をかけた。

 大谷は明日、勝ち切るつもりだ。

「敵地で昨日、今日といい野球ができていると思うので、それをしっかり継続して明日につなげたい。明日しっかり決める、そういう気持ちを持って、全員で頑張りたい」

 ちなみに明日勝った場合、誰がリーグチャンピオンシップシリーズのMVPなのか?

 打率5割、2本塁打、12打席連続出塁のプレーオフ記録を作ったマックス・マンシーか。打率.412、チーム最多7打点のエドマンか。2本塁打の大谷か。第5戦で先発するジャック・フラーティが第1戦に続いて好投すれば、彼もまた候補だろう。

 現時点では「大谷だ」と、あるベテラン記者。

 ドジャースが第5戦で決めるなら、誰がどんなパフォーマンスをするのか。それも見どころとなりそうだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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