なぜ名門クラブがリブランディングを? 大阪ブルテオンの狙い「バレーボール界へ送れるメッセージがある」
今夏にリブランディングを実施。パナソニックパンサーズは大阪ブルテオンに 【(C)OSAKA BLUTEON】
「企業スポーツ」のパナソニックがリブランディング
前身は「パナソニック パンサーズ」。1994/95シーズンの第1回Vリーグから通算6度の優勝を誇る名門クラブであり、この夏にリブランディングを実施。チームのこれからのビジョンを明確にし、新たな名称とロゴ、それに伴うユニフォームもモデルチェンジを行い、SVリーグに臨むことにしたのである。
そもそもチームは電機メーカーの「パナソニック」を母体とし、Vリーグ初年度時点では当時の「松下電器」の名前で活動してきたバレーボール部。いわゆる“企業スポーツ”そのものだった。選手単位ではプロ契約も含まれたが、メンバーの大半は企業に属する会社員であり、社員の一人として企業の看板を背負って競技に取り組む、というもの。この形態は、日本国内のあらゆる競技において見られ、バレーボールも例に漏れず、今でこそプロクラブが続々と増えているものの“企業スポーツ”チームがこれまで国内リーグを戦ってきた。
もっとも、それが良い悪いの話ではない。現役生活を終えた選手たちのセカンドキャリアという利点や、チームが活躍することによって社員たちの専属意識(ロイヤリティ)を高めることやそれに伴う就業現場の意欲向上、そもそも宣伝媒体としての役割もある。
だが、その一方で、企業の業績に左右される側面も。様々な競技で名門と呼ばれていたチームが、経営する母体企業の判断や意向によって活動休止や廃部を余儀なくされた例は数知れない。
久保田CEOの決意
「大阪ブルテオン」へのリブランディングを発表する久保田氏 【(C)OSAKA BLUTEON】
「私どもとしても以前は男子バスケットボールや女子バドミントン、女子サッカー、女子卓球のチームがありました。ですが、どれも休部しています。それは会社に頼りきりの活動だったから。業績が悪くなったら辞めなければいけないわけです。日本の企業スポーツはそれを繰り返してきました。母体企業の支援は非常に重要です。しかしそれ一辺倒では、持続可能な存在にまで成長させることは難しい。私はスポーツを持続可能なものにしたい。今回、バレーのリブランディングでも、その思いをもって実行に移したわけです」
持続可能な活動を実現するために。そのカギとなるのが、企業からの支援だけでなく、拠点を置く地域から広く支えてもらうことだった。ゆえに企業名をなくし、新たな名称に「大阪」をつけ、“BLUE(青)とEON(永遠)”から誕生した世界で唯一の固有名詞「ブルテオン」に、チームが掲げるビジョンを投影させたのである。
往々にして企業スポーツで成り立ってきた国内バレーボール界においては異質にも映る決断だったが、すでに2019年には当時の「豊田合成トレフェルサ」が現在の「ウルフドッグス名古屋」に改称したケースもある。そして久保田氏もサッカーJリーグの大宮アルディージャをはじめ、長年、スポーツマネジメントに携わって来た知見から、今回のリブランディングに並々ならぬ覚悟と決意で向き合った。
「地域に根ざしていかなければなりませんからね。これからはパナソニックパンサーズではなく、大阪ブルテオンなので。大阪の皆さんに応援していただくように変わっていく必要があります。
70年以上も活動してきたわけですから、どうしても“パナソニックのチーム”という印象が強いのは当然です。ですが、“地域のチーム”であることを、名前の変更も含めて、自分たちの姿勢で示していかなければ、地域に根付き地域の人々に応援していただくことにつながりにくい。これを信念として抱いています」