日本バレーボール界の底上げへ ヴォレアス北海道が創る「SVリーグの未来」

田中夕子

昨年、創設7シーズン目でV1昇格を果たしたヴォレアス北海道 【VOREAS,INC.】

 2024年8月末、ヴォレアス北海道のホームタウン、東川町に全国からバレーボールの強豪校が一同に会した。昨年、今年と春高バレーを連覇した駿台学園(東京)や、インターハイにも出場した洛南(京都)などヴォレアス北海道を合わせた7チームが集い、合同でのサマーキャンプが行われた。

 東川町のふるさと納税プロジェクトとして開催されるサマーキャンプはオフィシャルトップパートナーの「DNX Ventures」の協賛により、高校生同士での試合だけでなく、ヴォレアス北海道との試合やメンタル、戦術を学ぶためにエド・クラインヘッドコーチの講義や、栄養講習などバレーボール選手としての将来を見据えたものも多く、参加校の監督からも「貴重な経験だった」と好評を博した。

 まさにその“経験”こそが重要。そう話すのは、2016年、北海道に初のプロバレーボールクラブとして誕生したヴォレアス北海道代表の池田憲士郎氏だ。

「僕は高卒でプロになる選手がもっとでてきてもいいと思うんです。より高いレベルで挑戦することは、伸びしろを伸ばすためにはめちゃくちゃ大事なこと。早く挑戦して大きな壁にぶち当たることが重要で、そこを越えて成長する。極端に言えば在学中や、卒業後にすぐプロになる選手がもっと増えれば、SVリーグは魅力あふれるいいリーグになると思いますね」

念願のV1昇格で感じたギャップと手ごたえ

 発足直後から池田氏は「最短で日本一を目指す」と宣言し、昨年、クラブ創設から7シーズン目でV1昇格を果たした。企業チームが大半のVリーグで、地域に根差し、複数のスポンサー企業から支援を受けるプロチームであり、積極的に発信もする。バレー界で常に一石を投じる存在であったことは間違いないのだが、念願のV1昇格で日本代表選手を擁するトップチームと対戦する中で池田氏が感じたのは「ギャップ」だったと振り返る。

「二部や三部では話題性のあるチームだったので、そこそこ存在感があるという自負は持っていました。でも実際トップリーグに上がって見る景色は違っていた。Vリーグのコアなファンの方々でも、やはりトップリーグの中でも上位争いをするトップチームに注目が集まり、僕らのことは名前は知っている、派手な感じだけどよくわからないチーム、という印象なんだな、と。もっと知られていると思っていたのですが、まだまだだった、というギャップは確かにありました」

 とはいえ、集客数を見れば前年までとは劇的に変わった。過去6シーズンの総動員数と、昨年1シーズンの動員数がほぼ同じ。これまで地道に続けてきた活動が実った成果と捉えることもできるが、理由は明確だ。池田氏が言う。

「単純に試合数が増えました。V2でホームゲームが8試合だったのに対してV1では18試合。運営の人数は変わらない中で3倍の試合をしなければならない難しさはありましたが、運営側にとってはSVリーグのスタートにつながるいいトレーニングになった。いろいろなマーケティングや戦略を駆使すれば、今年は倍以上の集客につながるだろう、という手ごたえも得られました」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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