SVリーグ初代女王を目指すNECレッドロケッツ川崎 「世界一の成長」戦略に迫る

坂口功将

通算8度目のリーグ制覇を果たした昨季に続き、SVリーグでも頂点を狙う 【写真は共同】

 バレーボールの2024-25 大同生命SV.LEAGUE WOMEN(SVリーグ女子)は10月12日に開幕する。今季から装い新たにスタートする国内リーグのオープニングマッチをホームで飾るのは、昨季Vリーグ女王のNECレッドロケッツ川崎だ。

 国内リーグでは通算8度の優勝を果たし、昨季は2連覇を達成。きたるSVリーグでは“初代女王”を目指す。そのシーズンに向けてわかりやすく変わった点といえば、名称にチームが拠点を置く神奈川県川崎市の「川崎」が入ったこと。リーグの規定によるものだが、と同時に、これは地域にいっそう根ざして今後も活動していくことへの意志表示でもある。

 振り返れば、チームは2021年にリブランディングを実施。チームの運営強化と事業拡大をさらに押し出し、“宇宙一輝く星”というコンセプトの元、チームのロゴを刷新したほか、マスコットキャラクターやホームゲームの演出も宇宙を連想させるものに。ファンの名称も、ともに宇宙を駆ける“クルー”へとなった。

 その翌年、チームは川崎市が定める「かわさきSDGsゴールドパートナー」の認証を取得する。それが2022年9月のことで、先駆けて6月には「R-CONNECTION」という社会貢献プロジェクトを立ち上げている。取り組みとしては、地域におけるバレーボール教室や清掃活動、交通安全教室など。やがてゴールドパートナーの認証を受けるわけだが、NEC川崎のゼネラルマネジャーを務める中西了将氏は「タイミングがよかったんです」と話す。

「ちょうど小中学校などでSDGsに関する授業が増えてきたなかで、私たちとしてもそうした活動をしていかなければ、と。学校訪問やバレーボール教室、現役を引退した選手のキャリア形成なども含めた取り組みを通して地域とチームの距離が近づいた時期であり、さらに力を入れていったという具合です」

チームの活動を発信するプロモーション

世界観を表現したホームゲームの演出も、チームの魅力の一つになっている 【ⒸNEC RED ROCKETS KAWASAKI】

 とはいえ、「R-CONNECTION」を掲げたことで、そうした活動をスタートしたわけではない。プロジェクトの立ち上げに携わり、今季からアシスタントゼネラルマネージャーを務める岡田理恵氏は「以前からやっていたことを、リブランディングに際して名称をつけることで打ち出したわけです」と説明する。岡田氏は1999/2000シーズンから3シーズン、NECでプレーした経歴を持つ。その後は社業に移り、独立行政法人日本スポーツ振興センターで勤務したのち、2022年からチームに復帰した。今、その目に社会貢献活動に励む選手たちの姿は「みんな楽しそうにやっていますね。子供が好きな選手が多いんです」と映っている。

「R-CONNECTION」に取り組むことで、「選手たちにとっても、自分たちの活動がどういったことにつながっているのか、どういう声を得られているかが、より直接的に入るようになりました」と中西氏。曰く、2020年以降のコロナ禍も輪をかけ、「あらゆる活動ができなくなったなかで選手たちも自分たちの存在意義に価値を見出しながら取り組むようになりました。そうして、いい方向に進んだ」のだという。

 と同時に、活動の背景の一つにはチームのプロモーションがある。実際には、選手を起用したポスターなどを通して、チームの活動を地域に向けて発信しているのだ。岡田氏は自身の感覚と前置きしたうえで、「以前はプロモーションという感じがなかったかも。というのも、あくまでもチームは企業スポーツであり、会社の福利厚生の一環という色合いが濃かったので」と語った。

 無理もない。企業スポーツが中心となって、これまでバレーボールの国内リーグは歴史をつむいできた。ただチームとしては、そうした側面は持ちつつ、事業化により注力していく、そのためのツールとしてのプロモーションだ。

「私が2022年に戻ってきたときにはリブランディングがちょうど始まったときで、チームも企業スポーツの一つでありながら、自分たちで収益を上げることをみんなで模索していたところでした。そこは私がいちばん感じた変化で、『違うチームに戻ってきたのかな!?』なんて思いましたから(笑)。そこではプロモーションも含めてチームが、お客さんやファンの目線に立つことをしていたわけです」

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著者プロフィール

ライター。大学時代に“取材して伝える”ことの虜になり、母校の体育会ラグビー部で専属記者兼カメラマンを務めたほか、「月刊バレーボール」(日本文化出版)を経て、2024年から独立。読者の心が動く原稿を書けるように現場を駆け回る。競技問わずスポーツ界のユニフォームに深い造詣を持ち、所持数はゆうに100枚を超えるコレクターでもある。

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