Vリーグ・大河バイスチェアマンが語るバレー改革 「世界一のリーグ」に向けた現状と課題
24年には現Vリーグを刷新したSVリーグが開幕する 【写真は共同】
SVリーグはチームのプロ化、つまり運営法人の独立までは求めておらず、そこはリーグの改革として物足りない部分だ。SVリーグがお客さんの満足度を高め、地域に根ざして幅広く支えられる存在となるために、クリアするべき課題はいくつもある。
しかしバレーボールという競技の魅力、ポテンシャルは決して低くない。様々な課題を乗り越えた先には、SVリーグの明るい未来が待っているはずだ。インタビュー後編では乗り越えるべき課題、改革のポイントについて聞いている。
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チームがついていける改革
バレーボール界にとってはまず「2016年9月20日」が一つの節目でした。Bリーグ開幕戦の2日前ですよ。何があったかというと、当時の嶋岡健治会長が「新しいVリーグを作る」と仰った。要はプロ化の意思表示です。Jリーグができたときも(1993年5月に開幕した)直後の1994年にVリーグはできています。Vリーグが日本バレーボール協会から独立した一般社団法人になったり、様々なことがありましたが、決定的だったのは2016年です。そして2018年から今のV1・V2・V3が始まっています。
ただ2016年、ないしは2018年に比べると、同じアリーナスポーツでもBリーグは完全な上昇ムードに乗っています。特に男子のV1チームは「このまま行くと離される」という機運が高まっています。
――リーグがプロ化を目指していても、チームやオーナー企業との温度差があったと感じます。
今回SVリーグをやるにあたって注意したのはチームに押し付けない、そして割れないことです。8割以上がこちらに移ると決めてくれれば「勝ち」と言えるでしょう。だけどチームが割れて半分近くが「付いていけません」となったら、どう見てもうまくいかないわけです。
「全チームのプロ化でなければ、背水の陣でなければダメ」という意見もあるはずです。ただ「必ず独立した運営法人を作って、選手の8割をプロ化してください」と言った瞬間にこの話は潰れてしまう。
――そのような制約がある中で、リーグやチームをどう魅力あるものに変えていくのですか?
プロかアマかは良いから、チケットを買ってもらっている以上、それに見合うサービスを提供して、満足度を上げてくださいという話をしています。地域から応援されるチームになるためにはホームアリーナやホームタウンも定めることも必要で、行政としっかり向き合ってくださいと伝えています。そうこうしている間に成功例が出てくると私は思っています。そのとき「あっ」と皆さんが気づく状態を、最初の3年で達成したいですね。
資金不足との向き合いは?
大河氏は2022年9月からVリーグの役職に就いている 【スポーツナビ】
古い話になりますが、Jリーグが開幕の1年半前(1991年11月)に設立されたとき、10チームからの入会金が6000万ずつありました。年会費は4000万円です。1チームが1億ずつ払って、その合計10億を軍資金にして、Jリーグは圧倒的なプロモーションに打って出たわけです。Bリーグは2015年9月15日に最初の(参加チームによる)総会を開いて、集めたお金が4億とんで500万円。2016年3月に公益法人に変わるときまで、試合はまだ1試合もしていませんでしたが、半分近くを使いました。一つは人材、もう一つはチケットを始めとしたデジタル、そしてプロモーションに投資したからです。
我々もSVリーグを新たに立ち上げるときには、それなりの入会金を集める必要があります。入会金をいくらにするかは、会員総会で決めることですけど、そこである程度の投資資金を集めたいと考えています。
――Jリーグなら明治安田生命、Bリーグはソフトバンクという大きなスポンサーがいて、リーグの運営を資金的に支えています。
Bリーグもそうでしたけど「こう変わります」と夢を語って、スポンサーに呼びかける必要がありますね。チケットが買いにくいとか、快適な観戦に向かない施設を使用している……という状態ではまだ夢を語れない。代々木第二を使ったり、SAGAアリーナを使ったりして、多少グレードアップしたものをお見せできるようになってきて、ようやく夢が語れるようになってきているのかなと思います。
「きっかけ」を生み出すアリーナ
Bリーグのような短期間で5000人収容のアリーナを確保し、リーグ戦の8割をやるというほどの条件はまだ提示していません。ただ意識は少しずつ芽生えているのだと思います。ヴォレアス北海道は池田(憲士郎)社長が旭川市としっかり向き合っていますね。私も実は6月末に旭川で市長とお会いしています。旭川はおそらく5000人規模のアリーナができると思います。あとBリーグの新アリーナが、去年くらいからいくつもできていますよね。僕も多少は貢献しているから、使わせてもらってもバチは当たらないかな(笑)
――Bリーグの新アリーナ建設で逆にとどろきアリーナとか、船橋アリーナのスケジュールが空きますよね?
チームはそういう良い会場で1度ホームゲームを開催してみればいいと思います。ファンの目とか、選手の想いが絶対変わりますから。Bリーグでも沖縄アリーナができたら選手が「沖縄で1回やってみたい」と口を揃えて言っていたじゃないですか。
――琉球を取材している記者が「夢のアリーナで琉球の選手も頑張るけど、向こうの選手のパフォーマンスはもっと上がる」とボヤいていました。
話を戻します。ポテンシャルは十分あるバレーボールが、なぜポテンシャルを発揮できないか? それは何が成功かわかっていない、そして成功体験を知らないからではないですか? それを知る一番のきっかけがアリーナです。