東京グレートベアーズが史上初の「1万人」に挑戦する大一番 古賀、柳田が語り合う“応援の力”と見どころ

田中夕子

3月2、3日に「10,000人プロジェクト」として、東京GBのホームゲームが開催される 【写真:東京グレートベアーズ】

 昨シーズン、バレーボール・Vリーグでの最高動員数記録を打ち立てた東京グレートベアーズ(GB)。有明コロシアム開催のホームゲームで「10,000人プロジェクト」として開催されたその試合は、記録とともに大きなインパクトを残した。そして、よりパワーアップして開催される今季の「10,000人プロジェクト」に向けて、東京GBの古賀太一郎キャプテン、柳田将洋選手に試合の見どころを語ってもらった(取材:2月上旬)。

今までにない雰囲気だった前回の「10,000人プロジェクト」

――3月2、3日の両日に有明コロシアムで開催される東京GBのホームゲーム。「10,000人プロジェクト」と銘打ち、昨年は3月5日のジェイテクトSTINGS戦で「8,142名」のVリーグ最高記録を打ち立てました。古賀さんは昨年に続いての取り組み、柳田さんは対戦相手から自チームで掲げる「10,000人プロジェクト」について、それぞれどんなふうにとらえていますか?

古賀 プロチームとして集客力を大事にしていかなければいけない中、昨年は対戦相手がジェイテクトに決まり、柳田選手を筆頭に日本代表選手もいる相手の力も借りて、今までVリーグでは為し得なかった入場者数最高記録を出そう、とクラブ側から発信しました。でも正直に言えば見たことがない数字でしたし、僕も半信半疑でした。そこから達成のためにチラシをショッピングセンターで配ったり、さまざまな施策を打ち出して、8,142人という結果が出た。自分が現役の間にこのような環境で試合ができるとは思っていなかったですし、Vリーグであの景色が見られることが信じがたかった。夢の中でプレーしているような感覚でした。

柳田 ホーム、アウェイに関わらず、たくさんの観客の中でバレーボールができること自体がモチベーションになると僕個人も改めて感じる機会になりました。1球1球に対するリアクションや、観客の方々の反応、空気感、今までのVリーグのレベルとは確実に違っていましたね。僕らが劣勢でホームチームのグレートベアーズが優勢のときには、会場の押せ押せ感も間違いなくありました。訪れて下さった観客の方々が、あの会場の雰囲気をつくり出しているのをヒシヒシと感じました。

「Vリーグで一番盛り上がる」という自信がある

「僕の名前もたくさん呼んで応援してください!」と古賀選手。ポジションはレシーブ専門のリベロ 【写真:東京グレートベアーズ】

――応援の力を感じるのはどんなときですか?

古賀 会場へ入ってきて、お客さんがたくさん入っているスタンドを見るだけでもモチベーションになりますが、実はプレー中はほとんど、応援の声が聞こえていないです。集中しているから、というのもあるかもしれませんが、たぶん、僕の名前を呼ばれていないから気づかないんですよね(笑)。柳田! はたくさん聞こえるけど、「古賀!」とは聞こえないので(笑)。

柳田 いやいや、古賀! と言っている方もたくさんいますよ(笑)。僕は試合中も観客の方々の声はよく聞こえています。

古賀 そりゃ聞こえるよ。「柳田!」って名前を呼ばれているんだもん(笑)

柳田 ネガティブだなぁ(笑)。僕は試合と練習、どちらも同じテンションで臨みたいし、やろうと思っているんですが、実際はなかなか難しい。特に僕は点をとった後にガッツポーズして盛り上げて喜ぶタイプでもないので、むしろ決まったときに周りの方々、応援が盛り上げてくれることによって空気がつくられていると実感しています。

 僕自身、今年グレートベアーズに移籍を決めたのも、昨年味わった経験は間違いなくあって、現場とフロントが団結して進む中「10,000人プロジェクト」を掲げて、挑戦している。でも仮に達成できたとしても、そこがゴールではない。その挑戦の経過の中に自分も携わりたい、という思いがありました。今はバレー界がもっと発展するための走り出しで、未来からさかのぼったときに「あのとき自分がそこにいた」と思えるように、過程を一緒につくっていきたい、と思ったこともきっかけでした。大きくなったときに加わることは誰でもできますが、これから大きくなろうというところに飛び込んでいくのは大きなチャレンジでもある。そこに挑戦することが、クラブとしても自分にとってもこれからにつながるのかな、という思いはありました。

古賀 いろんなホームゲームがある中で、僕たちグレートベアーズのホームゲームは「Vリーグで一番盛り上がる」という自信があります。見に来て下さったお客さんや、対戦相手のチームも相乗効果でそれぞれのホームゲームのレベルが高まり、施策が増えていけばいいな、と思いますし、実際にパナソニック(パンサーズ)やウルフドッグス(名古屋)もさまざまな取り組みをする中、その一角をグレートベアーズも担い、昨年走り出した。結果として、バレー界のスタンダードを上げた、と見ていただけるとクラブとしてやってきたことに自信を持って今後も取り組んで、進んで行けますし、ゴールはまだまだ遠いですけど、昨年の「10,000人プロジェクト」で一歩目は大きく踏み出すことはできたと思いますね。

「日本のバレーは確実にレベルが上がっている」

――集客や認知度はもちろんですが、今季は柳田選手や深津(旭弘)選手など、新たに加わった選手も多い変化のシーズンでした。ここまでの結果、経過はどう見ていますか?

古賀 クラブとして2年目で、柳田、深津さん、日本を代表する選手が加入した。期待して下さった方も多いと思いますし、自分たちも自信を持って臨んだシーズンでした。その中でケガも重なったり、不運もありましたが、間違いなく言えるのは日本のバレーは確実にレベルが上がっている、ということです。日本代表の結果を見てもそこは疑う余地はないですが、クラブとして戦う上では結果がすべてでもある。うまくいっていること、いっていないことをプロチームとして精査して次に進んで行かないといけない、と現場の選手はシビアに考えています。今シーズンもファイナル6をかけた大事な試合が続くので、最後まで結果を求めて戦うのは当然だと思いますし、(10,000人プロジェクトを行う)有明コロシアムでの堺ブレイザーズ戦も大事な試合です。

柳田 勝てる、というベースで戦えている手ごたえはありました。でもそこで結果が出せていない。そこは受け止めるべき事実でもありますが、プロチームとして活動している中で選手1人1人の意識は決して低くはないと思います。コートの中だけでなく、コートを離れてもいろいろなワードが飛び交い、会話しているのを耳にすることも多くあります。会社員としてバレーボールをしている意識とは違う環境下にあるのかな、と思うし、ただバレーボールをするだけでなく、そのすべてが生活の一部になっている。バレーボールでお金を稼いでいる、という意識を持って戦っている選手が集まっている、というのは強く感じます。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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