好調時の感覚が「バチっ」と戻り始めた錦織圭 6年ぶりのジャパンOPでサプライズを狙う

秋山英宏

9月14日のデビスカップで久々に日本のコートに立った錦織。さすがのプレーに観客席からは感嘆の声が漏れた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

6年ぶりに日本の観客の前でプレー

 ほぼ満員の約9,000人が詰め掛けた東京・有明コロシアムに錦織圭が入場した。9月14日、国別対抗戦デビスカップ日本対コロンビア戦が開幕。西岡良仁が第1試合に快勝し、第2試合に出場する錦織が姿を見せると観客席のボルテージは沸点に達した。錦織が日本でプレーするのは、無観客での開催だった2021年東京五輪以来3年ぶり。観客の前でそのテニスを披露するのは、18年のジャパンオープン以来6年ぶりだった。

「久しぶりに見る景色だった」と錦織はその瞬間を振り返る。これから試合なのだから、感慨にひたる暇はなかった。だが、視界にはファンで埋まる観客席、大歓声が押し寄せてくる。ファンはこの瞬間を待ちわび、錦織もまた、この場に立つことを強く願っていた。

「(今年の全仏で)復帰してから、センターコートで試合をする、満員の中で試合をするのはあまりなかった」と錦織。左ひざの負傷で長期離脱、この3月には右肩を痛めた。5月末開幕の全仏オープンで復帰したが、3度のベスト8という実績を持つ34歳に割り当てられたのは、巨大なスタジアムではなく、こぢんまりした観客席のコートだった。ウィンブルドンでも同様。この景色とは、しばらく縁がなかった。錦織はこう明かした。

「こういう場でもう1回試合したいなっていうのは心にあった。それが(復帰への)モチベーションにもなっていた」

 錦織は日本で試合ができる幸せを噛みしめていた。そうして、コロンビア代表、世界ランキング237位のニコラス・メヒアに格の違いを見せつけた。ボールをとらえるタイミングの早さは絶頂期と遜色ない。「やっぱり錦織、すごいな」「(バックハンドの)ダウン・ザ・ライン、やばいよ」「これは見る価値あるよね」――筆者の耳にも感嘆のため息が飛び込んできた。試合を見たファンの興奮でSNSも沸いた。

 日本男子で初めて四大大会の決勝に進出した14年全米オープンから10年。ファンも世代交代が進んだのか、初めて生で観戦した向きも少なくなかったようだ。観客はテレビや配信の映像とは段違いの迫力に酔い、どの選手にも似ていない錦織のテニスに魅了されただろう。

 西岡、ダニエル太郎、若手の望月慎太郎などベストメンバーを組んだ日本は3勝1敗で勝利を収め、25年のデビスカップファイナル予選に進出した。錦織はその翌週、中国の大会に出場し(中国のホープ、19歳のシャン・ジュンチェン相手に1回戦で敗退)、次はいよいよ9月25日開幕の木下グループ・ジャパンオープンに臨む。会場はデビスカップと同じ有明コロシアム(有明テニスの森公園)だ。

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著者プロフィール

テニスライターとして雑誌、新聞、通信社で執筆。国内外の大会を現地で取材する。四大大会初取材は1989年ウィンブルドン。『頂点への道』(文藝春秋)は錦織圭との共著。日本テニス協会の委嘱で広報部副部長を務める。

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