4団体に4人の日本人王者、バンタム級戦線の近未来は? 武居は天心に異例呼び掛け、中谷の標的は井上弟に

長谷川亮

対戦予定なしも静かに火花を散らす中谷と井上拓真

WBCバンタム級王者の中谷は、10月に王座防衛V2戦を行う。この階級の本命とも言えるだけに、10月以降に誰と戦うのかが注目される 【写真は共同】

 天心が地域タイトルを争う10月14日にはWBC世界バンタム級王者・中谷も登場。77戦76勝(53KO)1敗の戦績を持つペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)を相手に防衛戦を行う。

 中谷は王座初防衛戦となった7月、ランキング1位のビンセント・アストロラビオ(フィリピン)と対戦。ボディストレートでわずか157秒でのKO勝ちを収め、早くも2度目の防衛戦に臨む。

 階級を超えた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」でトップ10に名を連ねる中谷だが、目標は「PFPで1位になること」だと堂々と宣言。バンタム級に次ぎスーパーバンタム級でも4団体統一を果たした井上尚弥はこのランキングで1位に選出されることもあり、まさに中谷が目指すべき存在だ。

 現在28戦28勝(21KO)という中谷についた異名は“ネクスト・モンスター”。当然、井上尚弥が意識されており、周囲の期待も高い。井上尚弥vsドヘニー戦に合わせ来日した米プロモート大手であるトップランク社のボブ・アラムCEOも、井上尚弥vs中谷戦について「可能性はある」と語った。

 そんな中谷が名前を挙げ、現在のターゲットとしているのが、同じ井上でも弟でWBA王者である井上拓真だ。そんな拓真は中谷の1日前、10月13日に堤聖也(角海老宝石)を相手に3度目の防衛戦を行う。両者はアマチュア時代に対戦しており、その際は拓真が勝利。堤は4度防衛した日本王座を返上し、リベンジと世界王座を狙い大勝負に打って出る。

 拓真は5月の防衛戦で石田匠(井岡)と対戦。初回にダウンを奪われる苦しい立ち上がりとなったが、以降は試合を支配し判定勝利。V1戦となった2024年2月のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)戦から、堅実なボクシングに加え攻撃性が目立ってきた。これまで和氣慎吾(FLARE山上/元OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者)、古橋岳也(対戦時の日本スーパーバンタム級王者)と日本人相手にも強さを見せてきた拓真が再び堤にもレベルの違いを示すか。

 拓真も「中谷選手の試合は注目して見ます」と興味を隠していないだけに、10月に両者がそろって防衛を果たせば、統一戦へ流れが傾いていくかもしれない。

 また、やや蚊帳の外に置かれている感のあるIBF王者・西田だが、過去には比嘉に「何もできなかった」と言わしめる判定勝利を上げており、拓真や中谷との統一戦、そして天心との対戦にも興味を示している。

 主要4団体の王者だけでなく堤や天心、堤に喫した1敗以外は6戦5勝(5KO)の増田陸(帝拳)と、日本人強豪がそろうバンタム級。武居の初防衛、そして10月に控える拓真と中谷の防衛戦、天心第5戦を経て、群雄割拠な情勢がまた一段と加速していきそうだ。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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