“3色”のメダルをそろえた鈴木孝幸 「1番厳しい」種目でメダルを引き寄せた戦略とは?

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銅メダルを獲得し、ガッツポーズする鈴木孝幸 【写真は共同】

 0.03秒がメダルか否かを分けたレースになった。

 9月3日(現地時間、以下同)に行われたパリパラリンピックの競泳・男子200m自由形(運動機能障害S4)、予選7位で決勝進出した鈴木孝幸は2分55秒17を記録し、4位とわずか0.03秒差の接戦を制して銅メダルを獲得した。これで今大会、金・銀・銅のメダルがそろった。

 試合後に「正直、1番厳しい種目だと思っていた」と話していたこの種目。メダル獲得の裏側に2004年のアテネ大会から6大会連続出場のベテランスイマーが「頭脳プレー」と表現した戦略があった。

予選7位で挑んだ決勝

 午前に行われた予選、2組目に登場した鈴木は50mを40秒34、100mを1分25秒68の2位で折り返す。後半は少しペースを落として、3分5秒23の3位でゴールし、全体7位で決勝進出を決めた。

 予選を振り返って鈴木は淡々と「感覚とタイムが合っているので、悪くないと思います」とコメント。決勝に向けては「前半の100mは決勝を想定した泳ぎをしたので、あの位(のタイム)で入って後半粘りたい」と語った。

 予選7位の鈴木は決勝を“端”のレーンで迎えた。「予選と同じようなつもりで入ったが、体が動いた分ちょっと(タイムが)上がったのかな」と最初の50mで39秒47をマーク。100mを「すごく想定通り」と1分24秒30の3位で折り返す。

 ここから「後半粘りたい」と話した通り、予選では48秒85だった100mから150mまでのラップタイムを45秒69、ラスト50mを50秒70から45秒18に縮め、2分55秒17でゴール。見事に銅メダルに輝いた。

あえて狙った端のコース

端のコースで決勝に挑む 【写真は共同】

 レース後、予選7位で決勝を迎えたことについて聞かれると、「計画的に端のコースを取ろうと思って、(予選を)泳ぎました」と話し、メダル獲得の要因について「調子が良かったのが1番大きい」と話した鈴木。2分台のタイムは東京大会以来で「自分が今出せる(最速)タイムがそのくらい」と語るが、メダルを引き寄せたのは「調子の良さ」だけではなく、予選から計算されていた戦略も関係していた。

“端でのコース”、その意図を尋ねると鈴木は「決勝で的にされないように、ちょっと離れて泳ぎたかった」とコメント。この“的にされない”という言葉の意味をこう説明した。

「どうしても自分は、短距離の方を(中心に)練習してきたので(スタートから)スピードが出ると思っている。だから最初にスピードが出て、周りに目印にされて追いかけられると、周りもいいタイムを出してしまうなというのがあった」

 予選の順位を落とすことには予選落ちのリスクも伴うが、「ラッキーなことに予選2組目だったので、1組目のタイムも確認できた。それで(1組目の)トップ4人のタイムは分かって、さらに(同組の)アミオメル・ダダオン選手が速いとか、事前にそういう2組目の選手の情報も分かっていたので、(それらを踏まえて)これくらいのタイムが決勝ラインかなと思いながら泳いだ」と語った。

 とはいえ、こういったレース展開をすることはあまりないという。それでも「正直、(メダルは)ギリギリだなと思っていたので、頭脳プレーというか、いろんな手を使って、勝ちにいきました」と話した。

 また、2つのメダルを獲得してからレースに臨めたことで「余裕というか、ゆとりみたいなものはあったと思います」という。そして現在はスプリントが占める練習の配分が大きい中で迎えたこの種目、「東京大会に向けてやっていた200mの練習や、レース配分、そういった引き出しを色々と開けて、使えるものは全部使って泳いだ」と振り返った。

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