“刺激的な”幕開けの開会式 パラリンピックの持つメッセージはパリでどう伝わるか?
パリ中心部にある「コンコルド広場」に鮮やかな花火が打ち上げられた 【Photo by Naomi Baker/Getty Images】
今大会は、史上最多となる167の国・地域に難民選手団の4400人が参加予定。9月8日までの12日間、パリの地で繰り広げられる熱戦とともに、パラリンピックの持つメッセージはどのように伝わっていくのだろうか。
“観客”とともに作り出された非日常
大会マスコット「フリージュ」に埋め尽くされた車が登場して話題を集めた 【写真は共同】
競技会場を飛び出した開会式。当日、前日と開会式の舞台周辺を歩いた際、大会スローガンの“広く開かれた大会”という言葉の意味を一部理解できた気がした。パラリンピックのシンボルマークである「スリーアギトス」が設置された凱旋門を起点として、シャンゼリゼ通りは大会ルックで装飾、その途中からコンコルド広場、チュイルリー公園までは立ち入りが制限され、一部では警察官らが物々しい雰囲気を醸し出していた。
ここで開会式が行われる。その空気がはっきりと漂いつつも、すぐ隣では買い物や観光、公園でくつろぐ人々の姿など、市民らの日常生活が行われている。パリの中心部に会場があることで、大会と日常生活の境界が分断されるのではなく、混じり合っているように感じたからだ。
とはいえ、開会式の作り出した空間は非日常そのもの。特に入場行進のラスト、フランス選手団の入場シーンは、観客の力で空気が一変した圧巻の光景だった。自然と立ち上がった観客らの手拍子や『オー・シャンゼリゼ』の合唱、それに応える選手団。と同時に、目の前で繰り広げられる“観客”とともに作り出された非日常に対して、無観客で開催された東京大会を思い返すと、非常に羨ましくも思った。
海外大会では最多の175人が参加
石山大輝(左)、西田杏(右)の旗手を先頭に日本選手団が笑顔で行進した 【Photo by Julien De Rosa-Pool/Getty Images】
選手団の先頭に立って、息の合った姿を見せた旗手の2人であったが、7月に開催された結団式が初対面だったという。
その結団式で西田は、開会式に向けて「私たちがまず楽しむことで、みんなを盛り上げていくことができると思う」と話していた。その言葉通り、2人の“楽しむ”姿が強く印象に残った。
旗手を終えた石山は「緊張よりもワクワク感が強かったです。 声援に後押しを受けて、いいパフォーマンスができるようしっかりと楽しんでいきたいと思います。今大会が初めてのパラリンピックということで、守りに入らず攻めて攻めてメダルを勝ち取れるような勢いのある試合を、お見せできたらと思います」とコメント。旗手という大役を務め上げた2人は、それぞれ競技に向けて最後の準備を進めていく。
今回、日本選手の参加は海外大会では最多の175人。「挑め、自分史上最強。」をスローガンに掲げ、アテネ大会を超える史上最多の53個のメダルを目指す日本代表は、どのような活躍を見せてくれるのだろうか。
パラリンピックでしか、伝えられないもの
パリ大会は初めてオリンピックとパラリンピックで同じ大会エンブレムが使用され、マスコットも、18世紀のフランス革命で自由の象徴とされた“フリジア帽”を共通のモチーフにしており、「スポーツで革命を起こす」という使命を課されている。大会を重ねるごとに、オリンピックとパラリンピックの垣根がひとつひとつ取り払われているが、そうした中でもパラリンピックでしか、伝えられないものはあると思っている。大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長も「パラリンピック革命」という言葉を挨拶の中で多用していた。
開会式の前日、日本選手団の田口亜希団長は「選手たちが自分たちの力を最大限に発揮すればおのずと、観客の皆様にもいろいろなものが伝わる」と語った。
パリ大会でパラリンピックの持つ“メッセージ”はどのように伝わっていくのだろうか。それを大いに期待させてくれる開会式だった。
(取材・文:山田遼/スポーツナビ)
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