松山英樹が日本男子ゴルフ初のメダルに笑顔  “心が試されるコース”の妙を田島創志が解説

田中凌平

シェフラー(中央)、フリートウッド(左)に次ぐ3位となった松山。五輪での結果にこだわっていただけに、嬉しい銅メダル獲得となった 【写真は共同】

 パリ五輪の男子ゴルフが「ル・ゴルフ・ナショナル」で行われ、現地時間8月4日に最終ラウンドを迎えた。日本勢は松山英樹(LEXUS)と中島啓太(フリー)が出場し、松山はトータル17アンダーで3位になり、念願の銅メダルを獲得。中島はトータル3オーバーの49位タイだった。東京五輪ではプレーオフの末に銅メダルを逃した松山だが、パリ五輪で雪辱を果たし、日本人男子ゴルフ初のメダリストとなった。優勝はスコッティー・シェフラー(米国)、2位にトミー・フリートウッド(英国)が入った。

 初日はノーボギーの63を記録して単独トップでスタートした松山だが、2日目は7バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの68で1位タイに。この時点でトップの11アンダーに松山、ザンダー・シャウフェレ(米国)、フリートウッドの3選手が並ぶ大混戦となった。3日目はショットに苦しみ3バーディー、3ボギーの71で4位タイに後退した松山だが、最終日に6バーディー、ノーボギーで65と追い上げた。

 メダル獲得に強い思いで臨んだ松山と世界トップレベルが集った海外勢。池に囲まれた“逃げ場”のないコースだっただけに、常に勝負が必要な“心が試されるゲーム”となった。2000年にプロ転向し、2003年には「久光製薬KBCオーガスタ」を制したプロゴルファーの田島創志さんに、今大会の難しさや印象的だったシーンを解説してもらった。

今までにない感情をあらわにした松山英樹

五輪期間中の松山は調子が上がりきっていない一面もあったが、最終ラウンドでは3連続バーディーを決めるなど、さすがのプレーぶりを見せた 【写真は共同】

 パリ五輪のゴルフは通常の試合と違った雰囲気が感じられました。各選手が毎年4回のメジャートーナメントに照準を合わせる中で、リオデジャネイロ五輪や東京五輪の時とは異なり、トップ選手がメダル獲得のためにプライドをかけて戦っていましたね。松山選手も「内容は関係なく結果を残したい」と言っていました。ここまで気持ちが前面に出ている松山選手は見たことがなかったので、相当メダルに対する思いは強かったのだと思います。

 4日間のプレーを振り返ってみると、調子はあまり良くなかったのではないかと感じました。3日目にあれだけショットを左に引っ掛ける松山選手は見たことがありません。その日は最後まで練習場に残って練習し、最終日にしっかりと調子を戻してくるあたりは、さすがだなと感じました。これは丸山茂樹監督の存在も大きかったと思います。松山選手は自分に厳しい選手なので、自分と同じレベルで戦ってきた人が近くにいて支えてくれるのは、非常に心強いですよね。

 今大会の松山選手のプレーを見て、改めて終盤に見せた右に曲げるフェードボールの精度の高さに感心しました。今回のコースは池の多さやフェアウェイの狭さ、セカンドカットとサードカットの芝の深さなどが厳しく、実力がそのままスコアに反映される“逃げ場”のないコースです。常に勝負せざるを得ず、心が試されました。経験豊富な松山選手は、コース設計者の意図のさらに上をいくショットを連発していましたね。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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