松山英樹が日本男子ゴルフ初のメダルに笑顔  “心が試されるコース”の妙を田島創志が解説

田中凌平

強力な海外勢は“紙一重”の戦いに直面

最終ラウンドを9アンダーでまとめ、見事に金メダルを獲得したシェフラー。田島さんは全盛期のタイガー・ウッズのようだと大絶賛 【写真は共同】

 最終日に9アンダーの追い上げで逆転優勝を果たしたシェフラー選手は、全盛期のタイガー・ウッズを彷彿とさせました。右に曲げるボールも左に曲げるボールも同じように高い精度で打ちますし、アプローチもパターも上手です。

 世界ランキング1位の実力を遺憾なく発揮し、松山選手よりも全体的に一枚上手のゴルフをしていました。シェフラー選手はショットの距離感が非常に優れていて、ピンを狙った時のショットでは、松山選手よりもピンに近いところに打っていましたね。また、松山選手は左に曲げるドローの精度が良くなかったのですが、シェフラー選手はどのショットも高い精度で打っていました。また、仲の良いトム・キム選手(韓国)と同じ組なのも好材料だったかもしれません。

 2位に輝いたフリートウッド選手はバーディーを取れば1位に並び、ボギーを打つとメダルが危うくなる状況で、最終18番ホールのティーショットをしっかり打ってきたのがさすがでした。これほど力が入る状況でのティーショットは、今まで経験した中でもトップクラスに難しいものだったと思います。

 最終日に首位でスタートして惜しくも5位タイに終わったジョン・ラーム選手(スペイン)は、最後まで攻め続けるべきでしたが、途中で安全に置きにいこうとしたところでコースの術中にはまってしまいましたね。悪いプレーではなかったのですが、少しのずれを修正できなかったところに“五輪の怖さ”を感じました。

 一方でロリー・マキロイ選手(アイルランド)は、後半にエンジンがかかってきたところの15番ホールで2打目を攻めた結果、痛いしっぺ返しをくらってしまいましたね。このショットが成功していたらメダルを獲得していたかもしれないと考えると、命運を分けたショットになりました。

ロス五輪に向けた日本勢の未来は“明るい”

49位タイに終わった中島だが、五輪で得た経験値は何物にも代えがたい。今後のさらなる飛躍が期待される 【写真は共同】

 今回は49位タイと奮わなかった中島選手は欧州ツアーで優勝していますし、惜しくも代表になれなかった久常涼選手も『カズー・フランスオープン』で優勝しています。日本人選手が世界で活躍するには、海外のコースで戦い続けることが大切なので、次のロサンゼルス五輪までの4年間が楽しみですね。

 ロス五輪の会場となる「リビエラカントリークラブ」は、松山選手が優勝した『ザ・ジェネシス招待』が開催されたコースなので、松山選手も引き続きロス五輪で金メダルを狙いにいくと思います。まだまだ日本の男子ゴルフ界の躍進は始まったばかりです。

 パリ五輪で世界中には素晴らしい選手がたくさんいることを感じていただけたと思いますし、画面越しに見ても素晴らしい雰囲気のコースだと感じられました。本当にゴルフ場はいいところなので、ぜひパリ五輪をきっかけに多くの人が観戦に来てくれると嬉しいです。

田島創志(たじま・そうし)

【株式会社 ダンロップスポーツエンタープライズ】

1976年生まれ。群馬県出身。高校時代はゴルフ部ではなく個人で活動し、関東大会で2位になるなど頭角を現す。日本大学進学後は決勝の常連だったものの、タイトルには手が届かなかった。2000年にプロ転向し、2003年に久光製薬KBCオーガスタでツアー初優勝を飾った。その後、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の競技担当理事に就任。運営側としても日本のプロゴルフ界を盛り上げた。現在はフリーのプロゴルファーに加え、コースセッティングアドバイザーやゴルフ解説も務めている。

2/2ページ

著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント