女子バレー日本代表、予選リーグの分岐点 元キャプテン荒木絵里香が悔やむ「あと1点」

田中夕子

予選リーグ最終戦でケニアにストレート勝ち。日本は準々決勝進出へ、わずかながら望みを残した 【写真は共同】

 バレーボール女子の日本代表は、予選リーグ最終戦でケニアにストレート勝ちを収めた。これで1勝2敗となり、プールBの3位が確定。プールAのフランス対アメリカの結果によって、準々決勝に進めるかどうかが決まる。元日本代表キャプテンで、オリンピックに4度出場した荒木絵里香さんが、日本の予選リーグでの戦いぶりを総括。大舞台で奮闘する後輩たちの姿は彼女の目にどう映ったのか。

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サーブの大切さをあらためて実感させられた

荒木さんがターニングポイントとして挙げたのが、ポーランドとの初戦の第4セット。「あと1点」を獲りきりフルセットに持ち込んでいたら、たとえ負けたとしても状況は違っていたかもしれない 【写真は共同】

 1次リーグは1勝2敗。日本時間4日に行われるアメリカ対フランスの試合で、フランスがアメリカにストレート勝ちしなければ、日本の準々決勝進出は絶たれる。非常に厳しい結果になりました。

 終わってから言っても「たら・れば」にしかならないとわかっていても、やはり大きな分岐点は初戦のポーランド戦、第4セットです。18対22とポーランドに先行された状況から追いついて、古賀紗理那選手のスパイク、ブロックで25対24と逆転してセットポイントを握った。第2、第3セットをポーランドに獲られていたのでこのセットを獲っても最終セットが待っていましたが、古賀選手が立て続けに決めていたことも含めて考えると、あのセットを獲りきってフルセットに突入していたら日本が勝っていたのではないか。

 そんな期待が高まった「あと1点」というところで精度が低いプレーが出てしまい、大事な1点を獲りきることができなかった。結果論とわかっていても、もしもあのセットを獲っていたらフルセットで負けていたとしても1ポイントを獲得していたので、精神状態は違ったかもしれません。

 昨年の五輪予選からずっと、勝負所での1点を確実に獲りきるとチームで掲げ、取り組んできました。結果的に、大事な場面で獲りきれなかった悔しさは選手たち自身が痛感していると思いますし、私自身も、東京オリンピックでは思っていた結果に遠く及ばず悔しさを味わいました。

 ケニア戦の前に準々決勝進出を争うドミニカ共和国とオランダの試合があり、ドミニカ共和国が3-1で勝利した。その結果を受けて臨むケニア戦は、決して簡単なものではなかったはずです。それでも、今日は今日できるベストの試合をしよう、とみんなが自分の役割と責任を全うしてプレーしていた。本当によく頑張った。

 試合後のインタビューで古賀選手が「キャプテンということは考えず、バレーボールが大好きな古賀紗理那としてこの試合に臨んだ」と話していましたが、難しい状況に置かれた時、どこに感情を持っていけばいいのか。葛藤するなかで、「バレーボールが大好き」という原点に立ち返る。同様に、結果がどうあれこれまで積み重ねてきた過程は変わらないし、その過程のなかに大事なものがいくつもある。最後まで誇りを持って戦いたい、周りの人たち、支えてくれる人たちの思いに応えるためにもオリンピックという場で最後まで戦う覚悟を持って、選手たちは最後までベストを尽くしてくれたと思います。

 とはいえ結果は結果であり、課題も多く残りました。

 3試合すべてに共通して気になったのは、Aパス(セッターの定位置に返るサーブレシーブ)が入ると、相手のミドルブロッカーにAクイックを簡単に決められるケースがかなり多かった。高さや地力で勝るポーランド、ブラジルだけでなく、ケニア戦でもかなりの本数を通されてしまいました。

 私もミドルブロッカーでしたので、経験があるからよくわかります。来ると理解していてもどうにもならない時はならない。それでも世界で戦っていくなかでは、対応して、対抗していかなければなりません。

 高さに対して高さで対抗できるかといえば日本は厳しい。ポーランドのように2メートルのミドルブロッカーは残念ながらいないし、高身長を求めても限界があります。

 それならばどうやって封じるか。簡単にAパスを返せないようにするためにはいいサーブを打って崩していかなければならないし、ブロックシステムももっと徹底してしかないといけない。世界の選手たちと同じようにやらなきゃいけない部分ももちろんありますが、日本には日本ができる、もっとストレスをかけるような戦い方をしていくことも必要なのではないかと考えさせられました。

 男子バレーを見ていても、今はサーブで攻めるのは当たり前。女子もずっとサーブ力を上げることにこだわってきましたが、あらためてサーブの大切さを実感させられる大会でもありました。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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