【週刊ドラフトレポート#17】都市対抗で脚光を浴びた高卒4年目左腕・吉田聖弥 伊原陵人は社会人でスケールアップ!
今回は都市対抗野球で見事なピッチングを見せた社会人のサウスポー2人を紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)
*現時点のレベルバロメーター:
★★★★★5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆3:上位指名(2位以上)の可能性あり
★★☆☆☆2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆1:育成であれば指名濃厚
「都市対抗で脚光!美しいフォームが光る高卒4年目左腕」
社会人4年目に大きな成長を見せた西濃運輸・吉田聖弥 【写真提供:西尾典文】
【将来像】杉内俊哉(元ソフトバンクなど)
バランスの良いフォームと高い制球力が持ち味で、杉内クラスになる可能性も
【指名オススメ球団】ヤクルト
左の先発候補が少ないチーム事情から
【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名(2位以上)の可能性あり
今年は目玉が不在と言われている社会人のドラフト候補だが、春から一気に評価を上げてきたのが吉田だ。伊万里農林時代も県内では評判だったが、学校が閉校になることもあってチームの部員数は少なく、2年秋以降は連合チームで大会に出場していた。初めてピッチングを見たのは西濃運輸に入社した1年目夏の中京大とのオープン戦だ。先発した船迫大雅(現・巨人)の後を受けて2番手でマウンドに上がり、3回をノーヒット、無失点と好投を見せた。当時のストレートの最速は140キロでほとんどが130キロ台だったが、欠点のないバランスの良いフォームは強く印象に残った。翌年3月に行われたJABA東京スポニチ大会の対日立製作所でもピッチングを見たが、1回を無失点、最速140キロという記録が残っている。しかしその後の公式戦での登板機会は少なく、ドラフト指名解禁となる昨年も目立った成績を残せず、話題となることはなかった。
しかし迎えた社会人4年目の今年、吉田は驚きの成長を見せることとなる。都市対抗予選では4試合に先発。27回を投げて自責点0、奪三振32という圧巻の成績でチームを本大会出場に導いたのだ。東海地区は全国でも1、2を争う激戦の地区であり、そこでこれだけの成績を残せる投手はそうそういるものではない。スカウト陣からも「西濃運輸の吉田見ました? 良くなっていますよ」という声を聞くことが多かった。
そんな話を聞けばピッチングを見ないわけにはいかない。都市対抗の初戦が行われる7月20日の予定を真っ先に抑えた。相手は15年連続出場のJR東日本。全国の舞台で強豪を相手にどんなピッチングを見せるのか楽しみにしていたが、吉田は期待通りのパフォーマンスを見せる。4回まで2つの四球のみでノーヒットピッチングを披露。5回と7回に連打と犠牲フライで失点したものの、最終的に7回を投げて被安打4、7奪三振で2失点としっかり試合を作り、チームの勝利に大きく貢献したのだ。前述した通り、入社当時からフォームの良さは目立っていたが、しっかりと軸足に体重を乗せてからステップすることができるようになり、体重移動のスピードも明らかにアップした。出力が上がるとバランスを崩して制球力が落ちる投手も多いが、吉田の場合はそういうこともなく、制球力も高い。立ち上がりはコンスタントに140キロ台中盤をマーク。変化球も縦のスライダー、チェンジアップ、ツーシームと落ちるボールを3種類操り、どれも決め球として使えるだけの威力がある。
少し気になったのは中盤以降のストレートの勢いだ。立ち上がりは145キロ前後だったスピードが140キロ台前半まで落ち、高めに浮くボールも目立った。都市対抗の初戦という緊張もあったと思われるが、もう少しストライクゾーンのストレートで力勝負できるだけの球威を維持できるようにしたいところだ。
ただ担当スカウトに聞くと、好調時のストレートはもう少し威力があるとのことで、逆に言えば調子がそれほど良くなくても試合を作ったところに能力の高さがよく表れている。続く7月26日に行われた北海道ガス戦でも先発を任され、5回1失点の好投を見せた。全国の舞台で2試合続けてしっかり結果を残したことで、スカウト陣の高い評価も固まりつつあることは間違いない。大学4年生と同じ学年という若さも魅力なだけに、展開次第では上位指名の可能性も十分にありそうだ。