週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフト候補レポート#14】世代屈指のスケール!山口廉王(仙台育英)、近畿では今朝丸に次ぐ右腕・村上泰斗(神戸弘陵)

西尾典文
 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回はいよいよ全国で本格的にスタートした高校野球の地方大会で高い注目を集めることが確実視される東北と近畿の本格派右腕を紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)

*現時点のレベルバロメーター:
★★★★★5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆3:2位以上の可能性あり
★★☆☆☆2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆1:育成であれば指名濃厚

「世代屈指のスケール! 一冬越えて急成長した193cm右腕」

スケールの大きさが魅力の山口、夏の宮城大会で評価を上げたい 【写真提供:西尾典文】

山口廉王(仙台育英 3年 投手 193cm/95kg 右投/右打)

【将来像】メッセンジャー(元阪神)
大型で迫力のあるフォームと意外な変化球の器用さから

【指名オススメ球団】中日
若手で将来の軸になりそうなスケールの大きい投手が少ないため

【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名の可能性あり

 一昨年夏は東北勢初の甲子園優勝、昨年夏も準優勝と2年連続で見事な戦いぶりを見せた仙台育英。昨年秋は県大会で早々に敗退し、苦しい新チームのスタートとなったが、そんな中で急成長を見せているのが大型右腕の山口だ。ただこれまでチームが出場した甲子園ではメンバー外で、昨年秋の時点でもスカウト陣から名前が挙がっていた選手ではない。山口の評判を聞いたのはチームを指導する須江航監督が選抜高校野球の解説として甲子園を訪れていた時だった。試合後、少し話す時間があったが、その時にこう言っていたのだ。

「(この春の)関西遠征で山口が最速149キロまで出ました。チームはまだまだですけど、ドラフト的には面白いと思いますよ。春はぜひ見にきてください」

 その後、北照と5月に行った練習試合では151キロまでスピードアップしたという。190cmを超える長身でこれだけのスピードがあるだけでも相当な大器であることは間違いない。その実力を確認するべく、春の宮城県大会を訪れた。決勝の対仙台城南戦、先発のマウンドに上がった山口を見てまず感心したのが堂々とした体格だ。上半身も下半身もしっかり鍛えていることがよく分かり、また姿勢も良いため一段とマウンド上で大きく見える。フォームは佐々木朗希(ロッテ)を彷彿とさせるような高い左足の上げ方に特徴があるが、そこからの動きは佐々木とは少し異なっている。佐々木がゆったりと踏み出して広いステップで投げるのに対して、山口のステップは比較的動きが早く、倒れ込むようにして腕を振るスタイルなのだ。どちらかというと日本人選手よりも外国人選手に多い投げ方と言えるだろう。ただ、左足の着地がまだ不安定で、投げ終わった後にバランスを崩しやすいのはまだ課題と言えそうだ。

 この日のストレートの最速は148キロで、アベレージでは140キロ台前半と体格ほどの出力の高さはまだ感じられなかったが、それでも豪快な腕の振りもあって打者に与える威圧感は相当なものがあることは間違いない。フォームのところで課題として挙げた、左足の着地が安定して、もっと前に体重が乗ってくるようになれば、楽に150キロ台中盤をマークしそうな雰囲気があった。

 山口の武器となっているのはストレートだけではない。大型でありながら変化球も上手く操る器用さを備えているのだ。この日は立ち上がりから大きいカーブを使ってカウントをとり、ストレートを見せ球に使ってフォークで勝負するというパターンが多かったが、どの球種でもフォームが大きく変わることがなかった。最終的に6回を投げて10個の三振を奪ったのも、変化球のレベルが高いという部分も大きかったはずだ。またこの日はトータルで82球を投じて、ボール球は24球でストライク率は70%を超えるなど、制球力があるところも示した。

 続く東北大会では準々決勝の弘前学院聖愛戦で5回を投げて6失点(自責点3)と試合を作れずにチームも敗れているように、まだ安定感には乏しいところはあるものの、スケールの大きさは魅力である。夏の宮城大会ではこれまでの悔しさを晴らすピッチングを見せて、さらに評価を上げることを期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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