【週刊ドラフトレポート#15】この夏の最注目右腕!福岡大大濠・柴田獅子 大砲候補の桐朋・森井翔太郎は日米スカウトが熱視線
今回は熱戦が続いている高校野球の地方大会で大量のスカウト陣が視察に訪れ話題になった2人の選手について紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)
*現時点のレベルバロメーター:
★★★★★5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆3:2位以上の可能性あり
★★☆☆☆2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆1:育成であれば指名濃厚
「新人王の先輩に匹敵する素材!この夏、高校No.1投手に躍り出る可能性」
躍動感のあるフォームが大谷翔平と重なる福岡大大濠のエース・柴田 【写真提供:西尾典文】
【将来像】投手としての大谷翔平(ドジャース)
大型でも体の使い方が上手く、躍動感のあるフォームも大谷と重なる
【指名オススメ球団】ヤクルト
奥川以外に若手で太い柱となる先発候補がいないため
【現時点のドラフト評価】★★★★☆
1位指名の可能性あり
以前のレポートでも狩生聖真(佐伯鶴城)、井上剣也(鹿児島実)という九州の好投手を紹介したが、同じ九州の福岡で彼らを上回る評価を受けそうな投手が出てきた。それが福岡大大濠のエース柴田だ。ちなみに名前の獅子は“れお”と読み、西武ファンだった祖父が名付けたという。
三浦銀二(DeNA)や山下舜平大(オリックス)など毎年のように好投手を輩出するチームでも早くから公式戦に登板し、2年春には九州大会にも出場している。しかし当時のスピードは130キロ台中盤で、昨年秋までスカウト陣からその名前が聞かれることはなかった。ようやくその名前を聞いたのは春の九州大会のこと。九州担当スカウトから「(福岡大)大濠の柴田見ました? かなり良くなっていますよ」という話を聞いたのが最初である。ただこの時点でチームは既に県大会で敗れており、残されていた公式戦は夏の福岡大会となっていた。
ようやくピッチングを見ることができたのは7月6日に行われた福岡工との試合だった。まず投球練習を見て目についたのがフォームの良さ。190cmくらい身長のある投手の場合はどうしても大きな体を持て余して無駄な動きが目立つことが多いが、柴田はそういった部分がほとんどない。左足を上げた時にわずかに腰を回す動作があるのは気になったものの、捕手方向に真っすぐ踏み出すことができており、さらにギリギリまで体が正面をむかず、それでいながらスムーズに豪快に腕を振ることができている。事前に下級生の頃の映像も見ていたが、当時と比べても踏み込みが明らかに力強くなっており、フォームの躍動感も申し分ない。大きな体がマウンド上で跳ねるような様子は大げさではなく好調時の大谷翔平(ドジャース)を思わせるものがあった。
ストレートは立ち上がりからコンスタントに145キロを超え、この日の最速は149キロをマーク。ただスピードガンの数字が速いだけでなく、指のかかりも素晴らしいものがあり、数字以上に打者の手元で勢いが感じられた。躍動感がありながらも腕の振りも体から近く、良い意味でのまとまりもあるためコントロールも安定している。この日は5回を60球という少ない球数で投げ終えており、ボール球はわずかに18球だった。序盤からチームが大量リードする余裕のある展開ということもあってか、変化球はスライダーしか投げていなかったが、そのスライダーも120キロ台中盤のボールと130キロ台のカットボールに近いものを投げ分けており、どちらも打者の手元で鋭く変化していた。これに緩いボールや縦の変化を混ぜていけば、さらにストレートの威力が増してくるだろう。
終わってみれば5回を投げて許した走者は味方のエラーの1人だけで、参考記録ながらノーヒット・ノーランを達成。しかし柴田の魅力はピッチングだけではない。5番を任されているバッティングでも非凡なところを見せたのだ。第1打席は外角高めのボールを引っ張ってライト前に運ぶと、第2打席、第3打席でも連続タイムリーを放ち3安打2打点をマーク。投球と同様に踏み込みがしっかりしており、腕力に頼ることなく下半身を上手く使って鋭く引っ張ることができるのが持ち味だ。ヘッドスピード、打球の速さも申し分なく、打者としての能力も高校生としてはトップクラスと言えるだろう。
この日はソフトバンクが8人、ヤクルトが7人など10球団、30人を超えるスカウトが集結していたが、強烈なインパクトを残したことは間違いない。視察したスカウトの中からは「高校生では1、2のレベル。(山下)舜平大と比べても遜色ない」という声も聞かれた。先輩の山下も最終学年で一気に評価を上げて最終的に1位となったが、柴田もそれに続く可能性は十分にありそうだ。