【週刊ドラフトレポート#17】都市対抗で脚光を浴びた高卒4年目左腕・吉田聖弥 伊原陵人は社会人でスケールアップ!
「社会人でスケールアップ! 速球の回転数はプロでも上位の小柄な左腕」
武器である変化球に加え、ストレートの質も向上したNTT西日本・伊原陵人 【写真提供:西尾典文】
【将来像】小柄な大野雄大(中日)
真上から投げ下ろす腕の振りと、強気の投球は大野と重なる
【指名オススメ球団】オリックス
左投手の絶対数が少なく、先発、リリーフ両方の可能性からも補強ポイントとマッチ
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚
吉田と並んで今年の都市対抗で高い注目を集めていたサウスポーが伊原だ。智弁学園では2年秋からエースとなり、3年春には選抜高校野球にも出場。小柄だがシャープな腕の振りと躍動感のあるフォームは当時から目立っていた。大阪商業大でも層の厚い投手陣の中で1年春からリーグ戦に登板。2年秋からは主戦となり、4年間でリーグ戦通算15勝1敗という圧倒的な成績を残している。ただ170cmという身長で、140キロ台前半というスピードに物足りなさがあったのも事実で、大学卒業時にプロ志望届を提出したが、指名はなく社会人へと進むこととなった。入社したNTT西日本でも1年目から結果を残し、その年の都市対抗でも先発を任されたが、ストレートは140キロ台前半で、大学時代と大きく印象が変わることはなかった。
そんな伊原の印象が大きく変わったのが、今年の都市対抗予選だ。実際に現地でピッチングを見ることができたのは5月31日に行われたパナソニックとの試合だった。これに敗れると本選の出場が厳しくなるという大事な試合ということもあってか、立ち上がりは制球を乱して押し出し死球で1点を失ったものの、2回以降は抜群の投球を披露。最終的に7回を投げて被安打3、1失点、11奪三振という圧巻の内容でチームを勝利に導いた。
まず昨年までと比べて大きく変わっていたのがストレートのスピードと勢いだ。最速は146キロとそこまで驚くような数字ではなかったが、打者の手元での勢いは素晴らしいものがあり、パナソニック打線のバットは度々空を切った。左投手だと右打者の内角を攻めることはできても、左打者の内角に強く投げ切ることができない選手が多いが、伊原は両サイドにしっかり狙って速いボールを投げることができている。また球数が100球を超えてからもスピード、コントロールともに全く落ちることはなく、スタミナ面での充実ぶりも目立つ。体つきも大学時代と比べて一回り大きくなったように見え、フォームの躍動感と安定感もさらにアップしていた。
変化球も110キロ台のカーブとさらに遅い100キロ台のカーブを投げ分けて緩急をつけるのが上手い。120キロ台後半のスライダー、130キロ台のフォーク、カットボールと速い変化球にもバリエーションがあり、どのボールでも勝負することができていた。
試合後に話を聞くことができたが、昨年はカットボールに頼っていた部分が多かったが、今年は練習ではそれを封印してストレートの質を上げることに取り組んできたという。武器である変化球がありながらもそれに頼ることなく、さらに上を目指してレベルアップに取り組み、結果を残したというのは見事という他ない。
続く都市対抗本選でも初戦の三菱自動車岡崎戦で先発を任され、5回1失点の好投で勝ち投手となった。都市対抗の中継ではスピードガンの数字とともにボールの回転数も表示されるようになっているが、伊原のストレートは2,500回転を超えることも珍しくなく、これはプロでもトップの数字である。大学時代から回転数は多かったそうだが、そこにスピードも加わってきたことで、より打ちづらいボールになったことは間違いないだろう。
都市対抗予選では先発だけでなく、リリーフでも結果を残しており、そういったピッチャーとしての“幅”があるところもプロ側にとっては大きな評価ポイントではないだろうか。2年前に届かなかったドラフト指名も、十分射程圏内に入ってきたと言えそうだ。