ブラサカ日本代表が体験したライバル国の“特異さ” パラでのメダル獲得とその先に目指す未来は?

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パラリンピック前最後の国際大会に臨んだブラインドサッカー日本代表はPK戦で涙をのんだ 【写真は共同】

 ブラインドサッカー男子日本代表は7月4日から7日までの4日間、パリパラリンピック前最後の国際大会「ダイセル ジャパンカップ」に臨んだ。同大会には日本(世界ランキング3位)、モロッコ(同8位)、メキシコ(同9位)、マレーシア(同26位)の4か国が出場。開幕から3日間で総当たり戦が行われ、最終日に決勝戦および3位決定戦が実施された。

 日本は1勝1分1敗の2位で総当たり戦を勝ち上がると、3勝0敗の1位で勝ち上がったモロッコとの決勝戦に臨んだ。総当たり戦では0-1で敗戦したモロッコ相手に先制するも、同点に追いつかれ、PK戦の末に涙をのんだ。

 東京パラリンピックで銅メダルを獲得し、パリパラリンピックでも日本とグループリーグで同組に入っている強豪のモロッコ。攻撃面に特徴を持ち、中川英治監督も「特異なチーム」と話すモロッコとの対戦は0勝2敗に終わったが、中川監督が就任した2022年1月以降の対戦経験がなかった。その“特異さ”に2戦とも先発した後藤将起は「やってみないと分からない部分が多いので、(実際に対戦ができて)すごくよかった」。

 パリパラリンピックに向けて中川監督は「もう一段、二段、しっかりといい準備をして、メダルを取れるように頑張っていきたい」と決意を新たにした。

 また、初めて大阪で開催された国際大会。パリへ向けた強化とともに、ブラインドサッカーの未来にも意義のある大会となった。

特異なチーム・モロッコとの対戦

 5日に行われたモロッコとの1戦目は、試合を通してモロッコが押し込む展開となった。日本も組織的な守備からカウンターを狙い「カウンターに入るところはすごくよかった」と中川監督は振り返った。しかし得点を決めることはできないまま、第2ピリオド13分にモロッコの9番・ズハイール・スニスラが前線からのプレスでボールを奪取、そのまま右足を振り抜き、これが決勝点となった。

 5日の試合後、17歳の若きエース・平林太一にモロッコの強さについて尋ねると「今のブラインドサッカーから外れたプレーをしていると感じた。ダイレクトシュートもとてもうまくて、普通のサッカー的なドリブルをする。(ブラインドサッカーは)普通、インサイドで(ボールを)コントロールしながらドリブルする人が多い中、蹴り出しながら前進したり、そういった所があるので、めちゃくちゃ特殊なチーム」と分析してくれた。

 ただ、その“特異さ”を体験できたことは大きな収穫だ。これまでモロッコ対策をしてきたものの実際に対戦することで、平林は「(予想以上に)精度が高くて、めっちゃビビりました」。中川監督は再戦に向けてのポイントを「相手の戦術に対抗する僕らの戦術と、あとは個人に対する僕らのチームの戦い」と話した。

 そして迎えた決勝。この日は日本が序盤からいい展開を作っていった。第1ピリオド8分には、後藤が倒されてフリーキックのチャンスを得る。これを主将・川村怜が左に持ち出して、グラウンダーのシュートを放ち先制点を決めた。

 川村は得点シーンを「あのエリアでのフリーキックには結構自信あったので、冷静に決めることができた」と振り返った。

 しかし第1ピリオド終了間際、モロッコのゴールスローを日本のゴール前でモハメッド・エル・アムシが受け取ると、そのまま反転して同点シュートを決めた。ディフェンスのマーク管理が曖昧になった部分が失点につながり、試合後に中川監督は防げた失点として「修正してきたい」と課題に挙げた。

 第2ピリオドも拮抗した展開が続き、カウンターから後藤が惜しいシュートを放つなどチャンスを迎えるも、両チーム得点を奪えずPK戦に突入。最初の3人で決着が付かず、最後は5人目のフサム・ギリーが決めてモロッコが勝利した。

 2試合とも勝利することはできなったが、中川監督は改めて「モロッコの特徴、フィジカル的な強さやシステム配置、そういったことをすごく体感できた。しかも2試合できたことは、もの凄く大きい」と振り返った。

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