ブラサカ日本代表、パラでのメダル獲得へ “シンカ”を経て“特殊”な環境に適応できるか?
パリパラリンピックへ向けて日本代表主将の川村怜は手応えを掴んでいる 【写真は共同】
日本は4日の初戦、マレーシアと対戦し1-0で勝利。相手の堅守に苦しみながらも、主将の川村怜が試合終了間際に得点を決め、勝ち点3を手にした。
8月28日に開幕するパリパラリンピックに向け、日本はこれが最後の大会出場。中川英治監督は大会前、チームの仕上がりについて「いい感じでみんなきている」と話した。今大会での“シンカ”を経て、目標に掲げるメダル獲得に近付くことができるか。
パラリンピックに向けたシミュレーション
試合は序盤から日本ペースで進んでいたが、得点が生まれないまま時間が経過。苦しんだ要因の一つとしてマレーシアの“アバウトさ”があったという。
この言葉の意味を川村に尋ねると「セオリー通りにボールとゴールの間に相手が立っていなかったり、ボールの音に反応してくれなかったりと、予測できない動きをして、それが難しかった」
この“アバウトさ”を攻略できないまま、試合も終盤に突入。引き分けかと思われた残り57秒に川村がゴール左隅にシュートを決め、これが決勝点に。苦しんだ中での得点ではあったが「相手も大分疲労してきていたので、チャンスは絶対あるなと思っていた」と冷静に振り返った。
ただ、結果以外にも注目したいポイントがある。それはパラリンピックの“特殊”な環境への適応だ。
ブラインドサッカーは視覚以外の感覚を研ぎ澄ませるスポーツ。プレー中は静かに観戦することが求められ、一般的には公園などのスポーツ施設で実施されることが多い。
一方、今大会は通行人をはじめ、「様々な人にブラインドサッカーを見て欲しい」という思いから、JR大阪駅の目の前に位置する「グランフロント大阪・うめきた広場」で開催されている。広場を行き来する人も多く、周辺の飲食店も通常営業しているなど、雑踏などの音がある“特殊”な環境でのプレーが求められる。
ただ、チームとしてもこの環境で試合をするメリットがある。それはパラリンピックの会場となる「エッフェル塔スタジアム」に適応するシミュレーションになるからだ。エッフェル塔に隣接するシャン・ド・マルス公園に仮設される同会場は1万人以上を収容し、通常の試合と比較して観客の声や反応が大きく伝わると予想される。
中川監督は大会前「パラのシミュレーションとして、まずは環境に適応して、音を拾うとか、声を出す。その出した味方の声をどこまで拾えるか、そういった所をしっかりできるようにするのが初戦のポイント」と話していた。
マレーシア戦の後、中川監督は「すごくいいシミュレーションになっている」。実際にプレーした川村も「苦戦した部分はあった」としつつ、パリに向け「こういった環境で事前に試合ができて、本当に感謝している」と話した。
パリでも対戦するモロッコ対策は?
そんなモロッコの印象を、川村は大会前に「非常に攻撃的な強みを持っている」、中川監督も「世界屈指のストライカーがいるチーム」と話した。4日のモロッコvs.メキシコは、1-0でモロッコが勝利。10番を背負うアブデラザック・ハッタブがフリーキックを決めたほか、華麗な突破を見せたり、強力なシュートを随所で放つなど、オフェンスで会場を沸かせた。
モロッコ戦のポイントについて、中川監督は「日本がグループ、もしくはチームでどう守っていくか。彼らは物凄くいい攻撃をするが、裏を返すと僕らには(相手の攻撃に対して)カウンターなどチャンスがあると思うので、その少ないチャンスをどう作っていくのか」という点を挙げている。
中川監督はこれまで“シンカ”という言葉を使って、チームの成長を促してきた。その言葉には「進化」「真価」「深化」という意味が込められている。今大会でまずは1勝を獲得した日本だが「一歩一歩成長できるようなチームにもっともっとしていきたい」と中川監督が話すように、“特殊”な環境への適応、ライバル国との対戦を経て、パラリンピックでの悲願のメダル獲得に近付くことはできるだろうか。
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