パラ陸上・唐澤剣也が得た「ガイドランナーの経験値」 自身の世界記録を更新されるも、銅メダル獲得

スポーツナビ

大会初日の5000m決勝に出場した唐澤(右) 【Photo by Paul Miller/Getty Images】

 日本で初開催となるパラ陸上の世界選手権が5月17日に神戸で開幕し、大会初日の男子5000m決勝(視覚障害T11)では唐澤剣也が15分03秒25で銅メダルを獲得した。昨年の世界選手権に続く連覇とはならず、自身が保持していた世界記録も金メダルのイエルツィン・ジャッキス(ブラジル)に1秒42更新される結果となった。また唐澤は大会3日目の19日にも、1500m予選(視覚障害T11)に出場。昨年の世界選手権では銀メダルを獲得した種目だったが、こちらは予選敗退に終わった。

 東京パラリンピックの5000mで銀メダルに輝き、今夏のパリでもメダルを期待される唐澤。結果には「悔しさが残る」と話したが、収穫を得ることはできたという。2度の延期を経て"有観客"で開催された今大会を糧にパリでの雪辱を誓う。

「粘り切れなかった」5000m

「悔しさをバネにもっともっと力を付けていきたい」。レース後、唐澤はそう前を見据えた。

 5000mは昨年の世界選手権と同様に、アグリピノ・ドスサントス(ブラジル)が前半をリードして、中盤からジャッキスがスパートをかける展開に。唐澤もそれを事前に予想し、「ラスト勝負になると思っていた」。

 しかし中盤、2位をキープしていた唐澤が前に出ようとしたのをドスサントスがブロック。コーチでもあり、ガイドランナーを務めた小林光二さんはその場面を「前に出て様子をうかがおうとしたが、出させてもらえなかった」と振り返った。すると、その隙を見逃さずジャッキスが後方から仕掛け、一気に先頭に躍り出る。唐澤も懸命に追うが、4000m付近でペースが落ちてしまった。

「ちょっと苦しくなったところで粘り切れず、(ペースを)落としてしまったのが、今回の敗因」

 唐澤はレースをそう振り返った。しかし残り1周で4位まで落ちた順位を一つ上げて、3位に浮上。順位を守り切って今大会で日本勢初のメダルを獲得した。

 昨年の世界選手権で優勝したことにより「油断があった」と唐澤は話したが、パラリンピックに向けた収穫もあった。それは“ガイドランナー”の経験値だ。

 視覚障がいのトラック競技では、短い紐(ガイドロープ)を選手とガイドランナーが握り合って走る。ガイドはペース配分やレース中の声がけなどを行いながら、選手とガイドが一体となってゴールを目指す。

 前半にガイドを務めた清水琢馬さんは、今回が初の国際大会。レースを振り返り「(普段の練習ではそこまで声かけをしていないが)情報をすべて唐澤選手に与えるようなイメージで、不安なく走れるようにサポートした」と話した。

 唐澤も「清水ガイドが(国際大会)初レースということで、いい経験になったと思う。今回の経験を踏まえ、しっかりチームで話し合って修正していきたい」と語った。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント