パラ陸上・唐澤剣也が得た「ガイドランナーの経験値」 自身の世界記録を更新されるも、銅メダル獲得
大会初日の5000m決勝に出場した唐澤(右) 【Photo by Paul Miller/Getty Images】
東京パラリンピックの5000mで銀メダルに輝き、今夏のパリでもメダルを期待される唐澤。結果には「悔しさが残る」と話したが、収穫を得ることはできたという。2度の延期を経て"有観客"で開催された今大会を糧にパリでの雪辱を誓う。
「粘り切れなかった」5000m
5000mは昨年の世界選手権と同様に、アグリピノ・ドスサントス(ブラジル)が前半をリードして、中盤からジャッキスがスパートをかける展開に。唐澤もそれを事前に予想し、「ラスト勝負になると思っていた」。
しかし中盤、2位をキープしていた唐澤が前に出ようとしたのをドスサントスがブロック。コーチでもあり、ガイドランナーを務めた小林光二さんはその場面を「前に出て様子をうかがおうとしたが、出させてもらえなかった」と振り返った。すると、その隙を見逃さずジャッキスが後方から仕掛け、一気に先頭に躍り出る。唐澤も懸命に追うが、4000m付近でペースが落ちてしまった。
「ちょっと苦しくなったところで粘り切れず、(ペースを)落としてしまったのが、今回の敗因」
唐澤はレースをそう振り返った。しかし残り1周で4位まで落ちた順位を一つ上げて、3位に浮上。順位を守り切って今大会で日本勢初のメダルを獲得した。
昨年の世界選手権で優勝したことにより「油断があった」と唐澤は話したが、パラリンピックに向けた収穫もあった。それは“ガイドランナー”の経験値だ。
視覚障がいのトラック競技では、短い紐(ガイドロープ)を選手とガイドランナーが握り合って走る。ガイドはペース配分やレース中の声がけなどを行いながら、選手とガイドが一体となってゴールを目指す。
前半にガイドを務めた清水琢馬さんは、今回が初の国際大会。レースを振り返り「(普段の練習ではそこまで声かけをしていないが)情報をすべて唐澤選手に与えるようなイメージで、不安なく走れるようにサポートした」と話した。
唐澤も「清水ガイドが(国際大会)初レースということで、いい経験になったと思う。今回の経験を踏まえ、しっかりチームで話し合って修正していきたい」と語った。