駒大・大八木総監督が見た五輪マラソン代表争い 愛弟子たちには“楽しみな未来”を期待
スポーツナビの取材に応じる、駒澤大の大八木弘明総監督。陸上長距離界の次代を担う選手に対する観察眼は、さすがの一言に尽きる 【撮影:柴山高宏(スリーライト)】
MGCファイナルチャレンジ設定記録(2時間05分50秒)の突破を目指した選手が多数出場した福岡国際マラソン、大阪マラソン、東京マラソンの3レースを、駒澤大の大八木弘明総監督はどう見たのか。3月6日、陸上競技部の選手寮「道環寮」で話を聞いた。
大阪を制した“孫弟子” 平林清澄
「細谷君はMGCを途中棄権したとはいえ、ちょっと準備期間が短かった感じはしますね。そのことを考慮すると、よく走ったと思います。ただ、福岡国際で2時間05分50秒切りは難しいですよ。日本人選手の最高記録は、藤田敦史(現・駒澤大監督)の2時間06分51秒ですから」
10月15日に行われたMGCから期間が短かったこともあり、福岡国際に参戦する有力選手は少なかった。一方で大阪は2月25日、東京は3月3日と1週間しか違わない。どちらを選ぶことが、パリ五輪への近道なのだろうか。
大阪の大会記録は、エチオピアのハイレマリアム・キロスが昨年マークした2時間06分01秒。今年から一部コースが変更して、折り返しの数が「5」から「3」となり、上り坂も少なくなった。
「大阪は前回まではタイムが出にくいと思っていましたが、今回は平林君が好記録を残してくれました。気象等の条件が良ければ、5分台が出るようなコースだと思います。マラソンにはじめて挑むのなら、東京より大阪の方がおもしろいかもしれません」
大阪マラソンで優勝した平林清澄 【写真は共同】
「平林君には前半、余裕を感じることができたし、後半も強かった。うまく流れに乗りましたね。『行けるところまでいこう』という気持ちの強さが、走りにも表れていました。大学3年生にしてマークした2時間06分18秒というタイムも素晴らしいですが、優勝したという実績が何よりも大事なんです」
「今回は25㎞でペースが落ちてしまったので、そこで押していければ、2時間05分50秒に肉薄していたかもしれない。2本目、3本目のマラソンをしっかり走り切ることができれば、真のマラソンランナーになれると思います」
平林を指導するのは大八木総監督の教え子である前田康弘監督だけに、平林は“孫弟子”のような存在だ。
「将来が楽しみな選手を育成してくれた、前田の指導も素晴らしかったと思います。平林君は十分にスタミナを持っていると思うので、今後はスピードを強化するのでは。10000mでいえば27分30秒ぐらいのスピードが付くと、いいですね」
大阪では教え子である村山謙太(旭化成)の走りも話題になった。
「(22km過ぎに)落とした計測チップを取りに戻りました。まだ余裕があったようですけど、謙太の真面目な部分が出てしまいましたね(笑)。そこがちょっともったいなかった。今回の経験を生かして、マラソンで成功してほしいです」
村山の結果は2時間09分00秒の18位。自己ベスト(2時間08分56秒)を大幅更新できる可能性があっただけに、悔やまれるアクシデントとなった。
転倒とラスト5kmに泣いた西山雄介
「東京は序盤の10㎞が下り基調なので、前半でタイムを稼いでおかないと後半がきつくなります。日本人トップ集団のペースメーカーはギリギリのペースで走っていたので、もう少し貯金を作ってほしかった。30㎞までのタイムが、20~30秒速かったらよかったですね」
日本人選手には悩ましいレース展開になったが、西山雄介(トヨタ自動車)が2時間06分31秒(日本歴代9位)、其田健也(JR東日本)が2時間06分54秒でフィニッシュ。世界選手権を経験している駒澤大OB勢が日本人ワン・ツーを飾った。