プロ野球史に残る「新人王レース」6選 敗れた選手も多士済々の顔ぶれがずらり
1998年セ・リーグの新人王争いは球史に残るデッドヒートとなった。その主役となった川上憲伸(写真左)と高橋由伸(同右) 【写真は共同】
※リンク先は外部サイトの場合があります
プロ野球史上初“新人特別賞”の快挙
西崎幸広と白熱の新人王争いを演じた阿波野秀幸。2人は「トレンディエース」と呼ばれ人気を博し、ライバルとして切磋琢磨した 【写真は共同】
最終成績は阿波野が15勝12敗、防御率2.88、西崎が15勝7敗、防御率2.89とほぼ互角。ただし、阿波野にはリーグ2位の22完投と両リーグ1位の201奪三振というアピール材料があった。記者投票の結果は阿波野の141票に対し、西崎が51票。予想外の大差は、「阿波野のほうが、記者ウケがよかった」ためともいわれたが、さて……。なお新人王決定の1カ月後、西崎にはパ・リーグ会長から特別表彰のメダルが贈られた。1950年に新人王表彰が始まって以降、特別表彰は初のことだった。
“空前の当たり年”90年の新人王争い
ドラフト史上最多の8球団競合でプロ入りした野茂英雄はけた違いの成績でタイトルを総なめにし、他の追随を許さなかった 【写真は共同】
セ・リーグの新人王争いを牽引したのは、中日・与田剛(NTT東京①)と広島・佐々岡真司(NTT中国①)の両右腕である。与田は開幕からストッパーとしてマウンドに仁王立ち。球速150キロ超の剛速球で打者を圧倒する様は、圧巻だった。一方の佐々岡は先発、リリーフの“二刀流”で「投手王国」広島の中にあって輝きを放った。与田は新人投手最多(当時)となる31セーブを記録し、最優秀救援と新人王のタイトルを獲得。13勝、17セーブを記録した佐々岡には、セ・リーグ会長特別賞が授与された。この年はヤクルト・古田敦也(トヨタ自動車②)も、新人ながら正捕手に定着。盗塁阻止率リーグ1位(.527)でゴールデン・グラブ賞に選ばれたが、新人王には届かなかった。
同年のパ・リーグは、近鉄・野茂英雄(新日鉄堺①)が「トルネード投法」と名付けられた独特なフォームと、そこから繰り出される剛速球、伝家の宝刀フォークボールで一世を風靡した。最終的に、野茂は投手四冠(最多勝=18勝、最優秀防御率=2.91、最多奪三振=287、最高勝率=.692)を獲得。新人王、ベストナイン、MVP、さらにはパ・リーグ初の沢村賞にも選ばれた。同年、西武に入団した潮崎哲也(松下電器①)はシンカーを武器に、43試合に登板。7勝8セーブ、防御率1.84の成績で、チームの日本一に貢献した。「通常の年なら潮崎が新人王間違いなし」といわれたほどで、いかに野茂が“規格外”だったかが分かるだろう。潮崎のほか、日本ハムの左腕・酒井光次郎(近畿大①)もシーズン3完封勝利を含む10勝10敗、唯一野手として新人王争いに参戦した近鉄・石井浩郎(プリンスホテル③)は86試合で打率.300、本塁打22と堂々の成績を残している。潮崎、酒井、石井には、リーグから新人特別賞が贈られた。