カーリングで今季無双したヒロインが世界へ 「緊張するタイプ」から脱皮を遂げたメンタル維持の秘訣とは?

竹田聡一郎

ミックスダブルスの日本選手権にて。MDの戦術はまだ吸収中だが、そのぶん伸び代は大きい 【著者撮影】

 カーリングの今季、最後を飾る大会であるミックスダブルス(MD)の世界選手権がスウェーデンのエステルスンドで開幕した。

 日本代表として出場しているのは、2月上旬に地元軽井沢で行われた日本選手権を制した上野美優と山口剛史、SC軽井沢クラブのペアだ。出発前会見に臨んだ上野は「イメージを持ってドローを投げ切りたい」とコメントしたが、今季の国内カーリングのヒロインはこの上野だったと言い切っていいだろう。

 2022年に世界ジュニアで日本に初めて世界大会の金メダルをもたらし、昨季よりSC軽井沢クラブのトップチームに加入。今季の序盤から中盤にかけてスキップも任され、夏の北海道ツアーや秋のカナダ遠征では苦しむ試合もありながら、着実に成長を続けてきた。

 右肩上がりのチームとその看板選手である上野は2月の日本選手権で大きく跳ねた。ロコ・ソラーレ藤澤五月、中部電力の北澤育恵、北海道銀行の田畑百葉という、ベテラン、中堅、若手と世代を代表するフィニッシャーにすべて投げ勝つ無双状態で初優勝を果たしたのだ。同一シーズンでの4人制とMDの“2冠”は女子選手としては初の快挙だ。そしてどの試合も上野は試合後に「楽しかった」と笑顔で振り返った。

 例えば日本選手権で藤澤五月と投げ合った直後の談話だ。

「オリンピックの銀メダリストである藤澤さんと投げ合える。しかも、日本選手権のこの舞台で投げ合えるっていうのはすごく楽しかったです」

 この「楽しかった」こそが彼女の原動力であり、強さでもある。そしてそれは上野の道程でもあり、ブレイクした今季にたどり着いたひとつの答えとも重なってくる。

 ラストロックを決め切るのは今や代名詞的なプレーだが、意外なことに本人は「私自身はもともと緊張するタイプなんです」と語る。SC軽井沢クラブのジュニアチームでプレーしていても、フォースを任されたのは「3、4年前だと思います」と言う。

「最後に投げるっていうプレッシャーを感じていましたし、もともとメンタルが弱いのでみんなに助けてもらっていました。今シーズンのどうぎんクラシック(8月/札幌)は調子が上がりませんでしたし、秋のカナダ遠征ではみんなの調子が良くても私のショットが決まらずに負ける大会がいくつかあって。それは本当に苦しかったです」

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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