8年ぶり3度目の五輪へ 日本代表のコンサドーレが難しいアイスに苦しみながら奮闘中

竹田聡一郎

左から阿部晋也、清水徹郎、敦賀爽太、大内遥斗 【筆者撮影】

連敗スタートも強豪に食らいつく

 スイス・シャフハウゼンで開催されているカーリングの男子世界選手権に北海道コンサドーレ札幌(以下コンサドーレ)が日本代表として出場中だ。

 リードの敦賀爽太、セカンドの大内遥斗、サードでスキップの阿部晋也、フォースの清水徹郎、そして今大会はフィフスとしてスポット的にロコ・ドラーゴから中原亜星を召集。この5選手は3月中旬に日本を発ち、スコットランドのアバディーン、エジンバラの両都市で大会出場や氷上練習に取り組み時差調整をしつつ、開幕3日前に現地入り。“ボブ”の愛称で親しまれているナショナルコーチのロバート・アーセル、チームコーチの敦賀信人、トレーナーの脇本貴能、マネージャーの斗澤元希と合流した。

 開幕前日の公式練習ではアイスの感触を確かめたフォースの清水徹郎が「思ったより曲がりの小さいアイス。スイーパーとも感触を共有してうまくスイープを使っていきたい」とアイスの印象と共に、スイープの重要性を予見した。

 迎えた現地時間30日の大会初日、日本は初戦から世界ランキング1位のイタリアと対戦する。先攻エンドは相手に1点を取らせる、後攻エンドでは複数点を狙う形をそれぞれ丁寧に辛抱強く作ったが、イタリア代表のスキップ、ジョエル・レトルナスの好ショットの前に一歩及ばず。それでも「置きたいところにはある程度、置けた」と阿部が振り返ったように一定の手応えを得ていた。

 続く2戦目も北京五輪金メダルチームである強豪スウェーデンとの対戦で、イタリア戦同様にチャンスの芽を撒きながらも最終的には押し切られて連敗となったが、2戦とも格上相手に食らいつくことができ複数点も記録した。内容的には悪くないスタートだった。

 3戦目のニュージーランドには3回のスチールを含んだ、8-3というスコアで初勝利。4戦目のドイツは逆に4度のスチールを許すなど1-8で完敗。続くチェコ戦にも6-8で惜敗。さらに地元スイスにも4-10で敗れる。ノルウェーに7-4で快勝し、大会4日目までにラウンドロビン(総当たりの予選)は通算2勝5敗の11位だ。

 白星先攻とはいかず、大会2日目に早々に研磨した石の扱いに苦慮しながらの戦いは、清水が懸念した曲がりにくいアイスでドローに課題を抱えた敦賀爽に代えて、中原を起用するなど最良の形を探りながらだった。

「どのチームと試合していても難しいショットを『なんか決めてきそうだな』という感覚があって、(決められるのは苦しいけれど)面白いです」と大内が語るように、敦賀爽、中原共に初の世界選手権となる21歳トリオも、緊張感や世界のレベルを肌で感じながら、1試合ごとに成長しているはずだ。

「意識できるレベルにない」と若手は一戦必勝の構え

 ただ、チームの成長はもちろん重要だが、今大会は日本代表としての結果もそれ以上に求められる。

 今年と来年の2度の世界選手権には2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の出場権に関わるオリンピックポイントがかかっており、ひとつでも順位を上げて2018年以来の男子カーリングの五輪出場の可能性を高めておきたいところだ。

 その平昌五輪に出場している清水は心情をこう説明する。

「やっぱりオリンピックっていうのはすごい舞台で、普段はカーリングに興味がない人も見てくれる大きなチャンス。そこに自分が出られてそれを強く感じたので、(2022年北京五輪の)女子の試合を見ながら『やっぱりあそこにたどり着かないとな』と痛感しました。正直、オリンピックがかかっているこの世界選手権はすごくプレッシャーはかかりますけれど、ここで戦える喜びもやっぱりあるし、なかなか経験できることじゃないのかなと思います」

 逆に大内は五輪については「意識していない」とした上で、こう補足した。

「正確に言えば、意識していないというよりも僕らは(五輪を)意識できるレベルにないというか、意識したところでいい結果になるわけでもないので、目の前の1勝に集中していきたいです」

 ラウンドロビンは残り5試合だ。現地時間3日はアメリカとスコットランド、4日は韓国、5日はオランダとカナダ。まだまだ列強との対戦が待ち構えてる。「格上のチームが多く、楽な試合なんかひとつもない」とは大会前に阿部が語っていた抱負だ。だからこそ、勝つことに大きな価値が出る。男子カーリングの未来を背負った戦いは続く。
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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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